マーケティングテクノロジースタックの設計方法

June 8, 2022

マーケティングテクノロジースタックの設計方法と導入までのプロセスは今後のマーケティング活動の明暗を分けると言っても過言ではない、重要なポイントです。今日はマーケティングテクノロジースタックを設計する上で重要なポイントをご紹介したいと思います。


以前、MOPSチームの役割でも触れましたが、マーケティングテクノロジーツールの種類や数は年々増え複雑化しています。企業のマーケティングチームはソーシャルメディア管理ツールからマーケティングオートメーション、CMS、CRM 、BIツール、広告プラットフォーム、など様々なツールを使っています。これらのツールの選定をするときは機能や特徴で選ぶのが基本的ですが、マーケティングテクノロジースタック全体のことを考えるとそれだけでは足りません。よくこの話はオーケストラに例えられますが、音色の全然違うバイオリンを集めてしまったり、オーケストラのサイズに合わない特大シンバルを買ってしまっては指揮者がどんなに頑張っても素敵な音楽になりません。マーケティングテクノロジースタックも同じで、計画なしに導入すると協調性が欠けてしまったり、各ツールの利点が潰れてしまう事もあるため全体を踏まえて各ツールの選定をすることが大変重要です。以下にテクノロジースタック設計において考慮するべき点をあげました。


マーケティングチーム全体の将来目標を明確化する

まずは1年後、3年後、5年後くらいのスパンでマーケティングチームが導入したいツールや変更しなければいけない点、こんなマーケティングをしていたいという理想像を明確化しましょう。会社全体の方向性に合っているか、こんなマーケティングをするためにはどれくらいヘッドカウントが必要か、予算は大体どれくらい見込めるかなども考慮して目指すべき姿をしっかり把握しましょう。

理想像が固まったら実現するためにそれに必要な機能やツールを羅列し、タイムラインも考えます。たとえば、今後1年でABMキャンペーンを展開したいのであれば、企業属性データをCRMに自動的に追加してくれる機能が今期末までに必要で、Webサイトパーソナライゼーションの機能が来期末までに必要だ、といったようにマーケティングチームのロードマップを立てるつもりで決めていきます。こうすることでいつまでにこんな機能を持ったツールが必要だという認識が固まり、マーケティングスタック全体の雰囲気も見えてきます。

また、これをチーム全体にしっかり共有することも大切です。全員で同じ方向を向いてテクノロジーツールの選定ができるよう、将来のビジョンも含めてチーム全体でブレインストームすると良いでしょう。


主要ツールのリサーチ

今の段階で今後導入したいツールを全て調べる必要はありませんが、ECやMAなど長期的に使うマーケティング活動の中心になるようなツールはこの時点で調べておきましょう。もちろん今選定まで行わなくてよいですが、ECならこの2~3つの中のどれかかな、と思える程度絞っておくとよいです。このステップでは各ツールの機能の他に、以下のことをチェックして選択肢を狭めると良いでしょう。

既存マーケティングツール・システムとのインテグレーションの可否
どのレベルでデータの連携ができるのか、連携完了までの工数、また、ツールによっては他部門システムとの連携(営業など)も考慮しなければいけません。

既存ツールと組み合わせた時にボトルネックになりそうな点
今まで作ったランディングページの移行ができない、とか今までつけていたリードスコアリングデータが引き継げないなど、考慮しておくポイントはありませんか?

ベンダーのカスタマーサービス提供の内容
自分のチームに必要なカスタマーサービス内容が受けられるか確認しておきましょう。

ベンダーのパートナーエコシステムの確認
ベンダーのパートナーエコシステムは大事なチェックポイントです。テクノロジーパートナーやソリューションパートナーのリストを確認し、今後のチームのニーズに沿っているか、よく確認しましょう。

分析機能
どのツールもある程度の分析機能が備えられていますが、ほとんどの場合各ツールの分析能力だけではマーケティング活動全体の分析はできません。BI/分析ツールを導入する必要があるかどうかも同時にチェックできるでしょう。


スモールスタートと定期的なアップデート

理想像を明確にして主要ツールのリサーチを終えたら、実現できるまでの長い道のりを前にどこから手をつけていいのか、悩んでしまいますよね。マーケティングテクノロジーの設計から実際の導入まではとても時間のかかる作業です。だからこそ最初にタイムライン化したものを参考に小さいところから手をつけることが大切です。また1年、3年、5年後という長期スパンで計画しているため、その途中で新しいツールや機能が発表されたり自社のマーケティングニーズが変わったり様々な変更点が出てくるでしょう。その都度テクノロジースタックを見直していると何も動かなくなってしまいますから、大体6ヶ月ごとくらいのペースでMOPSチームがいる場合はMOPS、いない場合はマーケティングチーム全体で今のニーズと市場に出ているサービス・ツールに差異が生じていないか定期的に確認するミーティングを設定しておきましょう。



まとめ

便利なツールが増えるのは嬉しいですが、選択肢が広がっているからこそツールを選択する私たちの眼が大事になっています。すぐ目先のニーズだけではなくマーケティングチーム全体の長期的なゴールや目標を踏まえたマーケティングテクノロジースタックの設計はこれからのマーケティングアクティビティの可能性や効率性を大きく作用します。MOPSチームのように専門的にこれを管理できるチームメンバーや部門があると最適ですが、いない場合も是非チーム全体でブレインストームから初めて見ると良いでしょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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