デジタル時代における競合分析

June 8, 2022

競合分析の必要性

3C分析に代表される通り、マーケティング戦略を作るにあたって競合分析は必須です。ベンチマークとなる会社の状況、商品詳細、マーケティング戦略を詳らかにして自社の戦略をよりシャープなものにしていきましょう。SWOT分析、5フォース分析、業界構造分析等推奨されているフレームワークは数多ありますが、競合調査に潤沢な予算と十分な時間が与えられていないということもあるでしょう。そんな時にはデジタルツールを活用してクイックに調査を進めていきましょう。

競合分析ツールは以下の画像が示すように様々ありますが、今日はその中でもおすすめのものをご紹介したいと思います。

引用:Smart Insights


ツール紹介(一部無料版有り)

SimilarWeb

SimilarWebは無料でウェブサイトの分析ができるイスラエル発のプラットフォームで、マーケターの間では最も有名な調査ツールの一つでしょう。世界規模で競合他社のウェブサイトのアクセス状況を把握し、オンライン戦略を明らかにすることが可能です。無料版であっても(無料版は過去3ヶ月分、有料版は過去37ヶ月分)以下のような情報を取得することが可能です。

  • Traffic Overview:おおまかなアクセス状況
  • Geography:アクセスしている国
  • Referrals Site:流入元と流入先サイト
  • Search Traffic:トラフィックを集めているキーワード
  • Social:ソーシャルメディアからのトラフィック
  • Display Advertising:広告からのトラフィック
  • Audience Interests:訪問ユーザーの属性
  • Similar Sites:競合のサイトの抽出
  • Related Mobile Apps:競合のスマホアプリ分析

ただし対象となるウェブサイトのトラフィックが極端に少ない場合など、データが出現しないことがあるのが難点です。また、これらのデータはSimilarWeb独自に取得したデータでありGoogle Analyticsのデータと乖離することもしばしばあります。そのため、精緻なPV数分析などには不向きと言われています。あくまで参考値として、競合のサイト運営方針などの調査に使用することが推奨されます。


Wappalyzer

Wappalyzerは、競合他社のウェブサイトにどのようなソフトウェアが使われているかを簡単に調べることができる無料ツールです。検索窓に該当ウェブサイトURLを入れるだけで簡単に競合他社の使用しているソフトウェア情報が手に入るため、無料登録プロセスなどの手間を省いて本当にクイックにリサーチしたい時に向いています。


Builtwith

BuiltWithはオーストラリア発のインテリジェンスツールで、ウェブサイトのプロファイリング、リードジェネレーション、競合分析(テクノロジーの採用状況、eコマースデータ、インターネットの利用状況など)などが可能です。

全ての機能が無制限で使用できる年間$9,950のTeamプラン、個人利用における人気プラン年間$4,950Proプランに加え無料版も提供しているので、まずはお試しで利用してみることをお勧めします。また、このBuiltwithは競合が使用しているソフトウェア詳細を確認したりマーケット分析をするだけでなく、自社のリードジェネレーションツールとしても活用可能です。


Google Keyword Planner

多くのマーケターが既に活用している知名度の高い調査ツールといえばGoogle Keyword Plannerでしょう。本来的にはGoogle広告を出稿する際のキーワード検索ツールですが、キーワードのトレンドを把握したり、競合他社のサイトやウェブ上で自社のビジネスやターゲット市場に当てはまるキーワードを検索するのにも活用できる競合調査ツールとしての側面を持ちます。同業界で強い影響力を持つキーワードからトレンドや市場動向を掴むのに最適です。


Facebook広告ライブラリ

Facebook広告ライブラリはFacebookプラットフォームにて実施されている全ての広告アクティビティが閲覧できる無料サービスです。キーワード、ページリンク、名称などで誰でも(広告出稿主でなくても)検索可能です。掲載日、アクティブor非アクティブ、リードフォーム詳細、広告バナーからLPへの導線までを確認することができるため、競合他社のFacebook広告戦略を把握するのに役立ちます。


Alexa

Alexaは、米Amazon子会社が運営している競合分析ツールです。無料トライアル版から月額$149の有料版に切り替えると、SEO対策のみならず、トラフィック分析、キーワード分析、更には自社サイトへの訪問者が訪れている他社サイトを確認できるAudience Overlap機能やコンテンツリサーチ、バックリンク分析など多岐にわたる機能の使用が可能になります。


Digimind

日本を含め世界各国であらゆるソーシャルリスニングツールがローンチされています。Digimindはフランス発のグローバルソーシャルリスニングプラットフォームです。各種ソーシャルメディアにおける会話の抽出はもちろん、ブログやアプリからも一部情報を獲得できます。プラットフォームは高度にカスタマイズ出来る仕様になっており、継続的に自社と競合比較を行うのに適しています。Digimindは完全有料サービスで、無料トライアルなどは存在していませんが、アカウントを開設すると専任担当者が手厚いレクチャーを実施してくれます。ソーシャルリスニングツールとして知られているものの中には無料で使用できるものも数多く存在していますが、往々にして情報の粒度が粗いのが実態です。精緻な情報をすべきフェーズにあり、かつ長期にわたっての競合比較を実施していく場合にはクオリティ重視でプラットフォームを選択するのが良いでしょう。


SEMRUSH

SEMRUSHはオールインワンの競合分析ツールです。年間$1,199〜で有料プランが提供されており、SEO、広告、SNS、コンテンツマーケティングなどオンライン領域にて包括的な領域で競合サイトの調査・分析が可能です。SEMrushは142カ国というグローバル規模で8億ドメイン、200億のキーワードを繋ぎこむリッチなデータベースが魅力的であり、事業規模が拡大するフェーズであっても継続使用可能です。


デジタルを活用した競合調査一例

1. 競合を特定する

まずは自社の競合が具体的にどこなのか特定することから始めましょう。既にある程度絞れている場合もありますが、あらゆる可能性を見逃さないためにも、上記ツールを活用しながら自社の真の競合を絞り込んでいきましょう。

使えるツール例

  • AlexaのAudience Overlap機能


2. 自社ブランドのポジショニングを確認

こちらはデジタルに限ったプロセスではありませんが、今後のステップをより効果的に進めるためにも、SWOT分析フレームワークを簡易的に行うイメージで、自社プロダクトの強み、弱み、特徴をピックアップして1でリストアップした競合他社と並べて比較してみましょう。


3. 自社と他社のトラフィックパフォーマンス比較

トラフィック情報を把握して、どのくらいのボリュームで、どういった層がどのような目的で自社および他社サイトを訪れているのか明確にしていきましょう。このフェーズでは具体的に、以下の数値を取得しておきましょう。

  • 月間訪問者数
  • PV数
  • 流入元
  • サイト直帰率
  • サイト滞在時間
  • ユーザーあたりのPV
  • エンゲージメント率(クリック、いいねなどのアクション率)

使えるツール例

  • SimilarWeb
  • SEMRUSH


4. キーワード分析

自社および競合他社のオンライン上のプレゼンスを把握する際、キーワード分析は欠かせません。自社商品・サービスに関連するトピックスは具体的にどういったキーワードで検索されているのか、競合他社がお金を出して購入しているキーワードは何か、実際に有効性のあるキーワードは何なのか把握することで、どのようにオンライン上で情報露出していくのが効果的なのか理解が深まります。

使えるツール例

  • Google Keyword Planner
  • SEMrush
  • Alexa


5. SOV (Share Of Voice: オンライン上での会話)

購買に大きな影響を与える要素として重視され続けている「口コミ」は、昨今のソーシャルメディアの盛り上がりにより「SOV(Share Of Voice: オンライン上での会話)」という言葉で語られるようになり、商品レビュー以上の意味を持つようになりました。自社および他社のオンラインプレゼンスを語る上でも欠かせない要素となりましたが、SOVにはソーシャル上の会話、ブログ掲載、口コミサイト掲載、自社サイト、記事メディア、広告への反応など多岐に渡っており、マニュアルで確認して分析するのは至難の業です。また、ある程度の情報量を持って定量的に可視化することで初めて分析が可能になるということを鑑みると、上記でご紹介したようなツールを活用してリッチな情報を常に取得することをお勧めします。

使えるツール例

  • Meltwater
  • Digimind


6. 被リンク戦略の確認

Google検索のランキングを決める大きな要素として知られるのが被リンク設定です。被リンクの量・質など設定状況に応じてサイトの有益性が左右されるためです。自社の分析はもちろんのこと、競合サイトの被リンク設定を詳らかにすることで最適なリンク数、狙うべきリンク元を検討することができます。

使えるツール例

  • Google Search Console
  • SimilarWeb
  • Alexa Rank
  • SEMRUSH


まとめ

デジタルツールの勃興と発展により、オンライン競合調査の選択肢は増えました。一方で、個々のツールの情報ソースや取得プロセスの不透明性から、信頼度を疑問視する声も目立つようになりました。そういう意味では、実際の戦略策定の際にはプライオリティを決めて情報ソースのしっかりした有料ツールを活用すると良いかもしれません。あくまで簡易的なリサーチ目的、あるいは仮説構築目的としては無料ツールや無料トライアル版の活用も有効です。またツールを使わずとも、ある程度マニュアルで確認できる情報もあります。例えば競合ブランドのYouTubeチャンネルにて6秒動画アップロードの日程、30動画のビュー数などをチェックするだけでもYouTube広告出稿量を予想できる場合があります。また、Google検索やGoogle Mapに現れるローカル広告を確認することによりSEMへの出稿状況予測も可能です。上記でご紹介したSimilarWebやSEMRUSH、Alexaなどは比較的包括的なサービス提供をしており、類似機能も多々あります。無料、有料含めご自身や現在のフェーズに合ったやり方を吟味していきましょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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