マーケティングテクノロジースタックのロードマップ

January 26, 2023

多くのマーケターがマーケティングテクノロジーツールの数や種類の多さに圧倒されています。ツールは毎年増え続けており、Chief Marting Technologistが毎年更新している有名なマーケティングテクノロジーツールのカオスマップは年々複雑化してきています。このように何千もツールがあり、毎年新しいテクノロジーが頻出する今日、一体どこから始めれば良いのか、今自社に必要なツールは何か、この先3年以内に必要になるツールは何か、マーケティングテクノロジーツールの計画的なビジョンを持つことを難しく感じている方も多くいらっしゃると思います。


引用: Chief Marketing Technologist


まず第一に考えるべきは「どのツールが必要か」ではなく「どの問題の解決やニーズに対応したいか」です。当たり前のことのように聞こえますが、多くの会社がこれをきちんと定義せずに先行してツールを導入してしまうため、「マーケティングオートメーションを導入したが、メール配信ソフトとしてしか活用できていない」「前から使っていた別ツール間の連携が難しくデータがサイロ化してしまう」という問題が起きることが多々あります。

”マーケティングテクノロジースタックの設計方法”でもご紹介しましたが、マーケティングテクノロジースタックの設計方法はよくオーケストラに例えられます。マーケティングチーム全体でどんな曲を演奏したいか、曲のどこに強弱をつけるのかなどを決め、担当マーケター/マーケティングオペレーション担当が指揮者となり、必要な楽器を決めて演奏するという形です。ベンダーや製品を比較検討する前の一番大事なステップ、要件定義でツールを効果的に使えるか否かが大きく別れてしまうのです。

 昨年10月、Bain & CompanyはB2Cブランド約100社を集め各社のマーケティングテクノロジー活用レベルを30+項目で調査し、全体の12%を「リーダー企業」、19%を「遅れている企業」とグループ分けしました。リーダー企業は多くのマーケティングテクノロジーツールを導入して最先端のマーケティング施策を打っているのかと思うと思いますが、実際にこの2グループで一番差異があったのはマーケティングテクノロジーツールの数ではなく、ユースケースの数でした。下のグラフが表すように、リーダー企業の約半数が10~24個ほどマーケティングテクノロジーツールのユースケースをもっているのに比べ、遅れをとっている企業のほとんどがユースケースを5つ以下しか持っていなかったのです。まさに宝の持ち腐れ状態に陥っているわけです。では、どのようにマーケティングテクノロジースタックを設計していけば良いのでしょうか?


引用:  Chief Marketing Technologist


要件定義とロードマップ


前述した通り、ベンダーや製品を比較検討する前の一番大事なステップに要件定義があります。自社が抱えている課題やニーズ、ビジネス目標、スケジュールなど様々なことを考慮する必要があります。価格こそ営業担当と話さなければわからないこともありますが、それ以外の点は要件定義さえしっかりとできていれば導入するべきツールはなんとなく見えてくるかもしれません。要件定義の他にもう一つ重要なのが、自社のマーケティングテクノロジースタックのロードマップを作ることです。現在の等身大のツールはなにか、1・3・5年後にはどうか、そしてそのためにはどのようなリソースやチームの整備が必要かを整理する必要があります。目まぐるしいスピードで変化するマーケティングテクノロジー業界では3年後、5年後まで想像することが難しい、またはそれまでにツールが大きく変わることもあるかもしれませんが、細かいところは気にせず5年後のビジョンを見据えた行動をとることが大事です。

Gartnerが出しているマーケティングテクノロジートランジションマップが良い参考になります。下記のマップでは各マーケティング施策、ツールやベンダーがどう関わり合っているかを地下鉄マップを模して表しています。「ロードマップ」というとリニア導線を描きがちですが、マーケティングテクノロジースタック設計の際はマーケティング部門が関わる全ての施策を考慮する必要があるため、もはや直線では描ききれません。Gartnerのトランジションマップは一見とてもカオスに見えるかもしれませんが、まさにこのようなマーケティング活動全体を俯瞰した視点が大変重要になるのです。

 引用: Gartner



いきなりツールごとのマッピングがしづらい場合はSpacey Campusのように課題や各マーケティング施策の抱える問題やニーズに合わせて必要・欲しいツールをすべて書き出してみましょう。書き出していく内に「このツールは広報/PRチームと分析チーム両方に必要だ」や「この二つの問題はそれぞれ別のツールを入れるよりも、このツールをいれてまとめて解決できるかもしれない」など多くの気づきが出てくることでしょう。これらを一つ一つ整理して調べていくと道が見えてくると思います。

引用:Spacey Campus


各ツールの能力範囲をしっかり理解し、どんな施策に使えるのか、どんなツールとインテグレーションする必要があるのかをしっかり理解して落とし込むには相当のリサーチと時間が必要になるでしょう。多くの場合マーケティングチームだけでは完結せず、エンジニアや営業、カスタマーサクセスチームなど様々な部門と提携して考えなければいけない場面も出てくると思います。しかし、これがあるのとないのとではマーケティングテクノロジーツールへの投資の効率性が大きく変わります。マーケティングテクノロジーツールの検討をされる場合はまずここから始めてみてはいかがでしょうか?

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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