GoogleやAmazonといった世界のテックジャイアントが音声対応デバイスを戦略の中核に据え、マーケットシェアを獲得しようとしのぎを削っています。マーケティング担当者が将来に備えるべきヒントとは?
音声認識技術が一般に知られるようになったのは比較的最近のことです。私たちは過去数十年にわたりテキスト入力によるオンライン検索を行ってきました。しかし本来、人にとっては入力したりクリックしたりするよりも話す方が自然な行動なのですから、音声入力による検索行動が主流になりつつあるのは人類学的な観点で見ると当然の流れかもしれません。
また、パンデミックに伴い音声起動アシスタントのようなタッチレス・テクノロジーが重宝されるようになったことも音声認識技術の発展を加速させる一助となりました。
音声認識技術の発達により、人とテクノロジーの関わり方が変化しています。
Google Home、Homey、Amazon Echoシリーズなどのデバイスは、欧米諸国のリビングルーム、キッチン、寝室でますます存在感を強めており、Siri、AlexaなどのAI搭載型バーチャルアシスタントは、スマートフォン、自動車、掃除機にさえも組み込まれています。 以下のデータもボイスサーチの台頭を示しています。
これらのデータが示す通り、ボイスサーチは間違いなく今後も成長を続け、オンライン検索を根本的に変えようとしています。今こそ顧客エンゲージメントの在り方、 ローカルSEO、コンテンツマーケティングについて見直しを行っていきましょう。
例えば友人に「スマートフォンを買うなら何がいい?」と尋ねた場合、友人は質問者の好みを汲み取った上で製品を推薦してくれるでしょう。このレベルにスケールアップされたインサイトを提供するには、膨大な自然言語処理能力と、何十億もの検索結果をふるいにかけて正しい検索結果を探し出す情報検索技術が必要です。以下の図は、検索エンジンの難易度と、それぞれ必要とされるテクノロジーを示したものであり、例のように個人の嗜好や好みに合わせたインサイトの提供が一番難易度が高いとされています。
Googleの新しい検索アルゴリズム「ハミングバード」はセマンティック検索(ユーザーの検索意図を検索エンジンが理解し、求める検索結果を提供するテクノロジー)の先駆けです。このアルゴリズムにより、ユーザーが検索エンジンに入力する検索クエリが会話文のようにあいまいな場合であっても、位置情報・日時・前後関係や主体関係を参考にしながら検索結果を提供できるようになりました。
現代の消費者は、自分用にカスタマイズされた検索結果をより早くより簡単に手に入ることを求めています。このような状況を鑑みてボイスサーチ戦略を練ることが現代のマーケターには求められているのです。
Googleは2018年頃から「near me search(ユーザーの現在地を自動的に検出し、最も関連性の高い近くの施設や場所を検索結果としてユーザーに提示する機能)」の活用が大幅に増えたことを発表しています。
また、同年のBrightLocalの調査によると消費者の58%がローカルビジネス(近くの施設や場所)を見つけるためにボイスサーチを使用しており、そのうち46%は定期的に利用していることがわかっています。このローカルボイスサーチの増加は、ローカルビジネスにとって大きなチャンスとなるでしょう。
2020年Voicebot.aiの調査によると、アメリカ人口の34.4%に相当する8770万人がスマートスピーカーを所有しています。世界的な5Gネットワークの導入に伴い、この数は今後さらに増加すると予測されています。
現在主な用途は、音楽の再生(85%)、天気予報(74%)、一般的なオンライン検索(72%)といった実用的な使用になっています。昨今では財務管理、航空券やホテルの調査、テイクアウトの注文などより本格的な検索も増えています。
SiriやCortanaといったバーチャルアシスタントが昨今のボイスサーチの普及に大いに貢献していることは確かですが、ボイスサーチの基本はスマートフォンです。テキストベースのサーチとは異なり、ほとんどのボイスサーチはモバイルで行われます。2016年時点で既にGoogleはAndroidアプリでの検索の20%がボイスサーチで行われていると発表しています。Googleはボイスサーチの利用可能地域をより多くの国に広げており、現在125以上の言語で利用可能となっています。
ここまでボイスサーチの発展とその背景、現在の在り方を確認してきました。では実際にマーケティング担当としてボイスサーチを成功に導くにはどのような点に着眼すべきなのでしょうか。
スピードとモバイルフレンドリーを重視することが必要です。Backlinkoによる10,000件のボイスサーチ結果の調査によると、ボイスサーチ結果のファーストバイト(ブラウザが受け取る最初の1Byte)までの時間は、平均的なウェブページの場合よりも大幅に短縮されることが分かっています。
Googleの「スピードアップデート(ページの表示速度が極端に遅い場合に順位を影響を与えるアルゴリズム)」が全ユーザーを対象に実施されている現在、モバイル検索やボイスサーチの戦略では、このスピードアップを最初に考慮する必要があります。
ボイスサーチを意識したコンテンツマーケティングが必要です。
また、Googleが提示している以下の評価項目をカバーすることも重要です。
AmazonとYextの提携によってボイスサーチのオポチュニティが拡がっていますが、そのパフォーマンスはブランドが正確で一貫性のある位置情報を提供できるかどうかにかかっています。ローカルリスティングを管理し、ローカル検索のパフォーマンスを分析するためには、専門のプラットフォームを使用するのがおすすめです。これらの作業をサポートするSEOランキングツールやモバイルSEOツールは、ますます充実してきています。また、消費者が自分の意思で行動しやすいように、明確な行動喚起と詳細情報への誘導を追加することも重要です。
今後はWebサイト以外にもチャットボット、アプリ、ソーシャルメディアすべてがボイスサーチクエリの情報を顕在化するために使用され、大容量の音声クエリがアプリ内で追跡され保存されるようになります。今後の製品・サービス企画には、参考としてその音声クエリが使用されるようになるでしょう。音声クエリは新しいサービスを企画する際の貴重なリソースとなり、未回答のクエリーは「=顕在化した需要」としてアイデアに反映することが可能です。
いかがでしたでしょうか。人間が本来持っている「話す能力」を活用するボイスサーチは、間違いなく人々の生活をより豊かにすることでしょう。現在はその効率性に注目が集まっていますが、今後はテクノロジーの発展に伴い、医療分野や安全保障など我々の生活の中でもより重要な分野に対してプレゼンスを発揮していくことでしょう。今の段階から、デジタルマーケティング戦略に音声を組み込むことを検討してみてはいかがでしょうか。