ABMにおけるセールスとマーケティングの連携の重要性

最終アップデート: 
November 6, 2024

本記事では、ABMの効果的な導入方法、ツールの活用法、データ活用のベストプラクティスについて詳しく解説し、Redis社での成功事例を通じて具体的な実践例を紹介します。

参考書籍

「レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識」のご購入はこちら

MOps101

「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」のご購入はこちら

はじめに

アカウントベースドマーケティング(ABM)は、B2B企業において重要性が高まるマーケティング戦略の一つです。従来のマスマーケティングとは異なり、特定の顧客アカウントに対してターゲットを絞り、そのニーズに応じたカスタマイズされたアプローチを行うことで、より深い顧客関係の構築を目指します。しかし、ABMの成功には、ターゲットアカウントの正確な特定、データの活用、セールスとマーケティングの密接な連携、そしてパーソナライズされたコンテンツ提供が欠かせません。

本記事では、ABMの効果的な導入ステップから、各種ツールの活用方法、データを活かしたベストプラクティス、そして成功事例を基に、ABMにおける具体的な取り組み方法を解説します。また、よくある課題とその解決策についても触れ、ABMの成功に向けた実践的なアドバイスを提供します。

ABMの導入とステップガイド

ABMを効果的に導入するためには、以下のステップを順に進めることが重要です。

  1. ターゲットアカウントの特定
    まず、理想的な顧客プロファイル(ICP)を定義し、それに基づいて高価値のターゲットアカウントを選定します。 このプロセスでは、企業の規模、業界、収益、所在地などのファーモグラフィックデータを活用します。 
  2. セールスとマーケティングの連携
    ABMの成功には、セールスチームとマーケティングチームの緊密な協力が不可欠です。 両チームが共通の目標を設定し、ターゲットアカウントに対する戦略を共同で策定することで、効果的なアプローチが可能となります。
  3. パーソナライズされたコンテンツの作成
    各ターゲットアカウントのニーズや課題に合わせたコンテンツを作成します。 これには、カスタマイズされたランディングページ、パーソナライズされたメール、アカウント固有の広告などが含まれます。 
  4. 適切なチャネルの選択
    ターゲットアカウントが最も活発に活動しているチャネルを特定し、そこに合わせたアプローチを行います。 一般的なABMチャネルには、メールマーケティング、ソーシャルメディア、ウェビナー、イベントなどがあります。 
  5. キャンペーンの実行と最適化
    ABMキャンペーンを開始し、そのパフォーマンスを継続的に監視します。 A/Bテストを活用して、最も効果的なメッセージや戦術を特定し、エンゲージメント率やコンバージョン率などのデータを収集して、戦略を最適化します。 

これらのステップを順に実行することで、ABMの導入が効果的に進み、ターゲットアカウントとの関係構築や収益向上に繋がります。 

効果的なABMツールの活用方法

ABM(アカウントベースドマーケティング)の根幹は戦略ですが適切なツールの選択と活用も大きく貢献します。しかし、残念ながらABMツールは日本市場に進出していないものが多く、適切なデータを得ることが難しくなっています。グローバルではターゲットアカウントの特定には、ZoomInfoやClearbitのようなデータプロバイダーが代表的に使用されており企業の規模や業界などの詳細情報を収集し、精度の高いリストを作成しています。また、ターゲットに合わせたパーソナライズドコンテンツの提供もABMの要です。UberflipやPathFactoryは、各アカウント向けの専用コンテンツハブを構築し、最適な情報を届ける支援を行います。複数のチャネルでターゲットに働きかけることも効果的です。TerminusやDemandbaseは広告、メール、ソーシャルメディアを統合し、一貫したメッセージを発信することで深いエンゲージメントを生み出します。

さらに、6senseやBomboraといったツールでインテントデータを活用し、アカウントの購買意欲を予測し、適切なタイミングで接触します。最後に、EngagioやBizibleを用いて、ROIの測定と施策の最適化を行っています。

未だこのようなABMツールがかけている日本では、戦略やマニュアルコンタクトでこれらを補う必要があり、多くの企業が直面する課題の一つとなっています。

ABMとデータ活用のベストプラクティス

ABMの成功には、データの効果的な活用が不可欠です。ABMにおけるデータ活用では、以下が重要になります。

  1. データの統合とクレンジング
    複数のデータソースから情報を収集し、一元的に管理することで、ターゲットアカウントの全体像を把握します。 データの重複や不正確な情報を排除し、最新の状態に保つことが重要です。
  2. インテントデータの活用
    ターゲットアカウントの購買意欲や関心を示すインテントデータを活用することで、適切なタイミングでのアプローチが可能になります。 これにより、効果的なパーソナライゼーションが実現します。
  3. データドリブンな意思決定
    収集したデータを分析し、マーケティング戦略やセールス活動の意思決定に反映させることで、より効果的なABM施策を展開します。 データに基づくアプローチは、成果の向上に直結します。
  4. 継続的なデータの更新とモニタリング
    ターゲットアカウントの状況や市場動向は常に変化します。 定期的にデータを更新しモニタリングすることで、最新の情報に基づいた戦略を維持できます。

よくあるABMの課題

アカウントベースドマーケティング(ABM)は、B2Bマーケティングにおいて効果的な戦略ですが、導入や運用にはいくつかの課題が伴います。

  1. セールスとマーケティングの連携不足
    ABMの成功には、セールスチームとマーケティングチームの緊密な協力が不可欠です。 しかし、両者の目標や指標が一致しない場合、連携が難しくなります。
    共通の目標設定や定期的なコミュニケーションを心掛け、両チームの連携を強化し、共同のKPI設定や、成果を共有することで、一体感を醸成することが必要です。
  2. ターゲットアカウントの選定の難しさ
    適切なターゲットアカウントを選定することは、ABMの効果を左右します。 しかし、データ不足や分析の不備により、選定が難航することがあります。
    データプロバイダーやインテントデータを活用し、ターゲットアカウントの選定精度を高めると同時に、既存顧客の分析を行い、理想的な顧客プロファイル(ICP)を明確にすることも重要です。
  3. パーソナライズされたコンテンツの作成負荷
    各アカウントに合わせたコンテンツを作成することは効果的ですが、リソースや時間が限られている場合、大きな負担となります。
    コンテンツ作成のテンプレートを用意し、効率化を図ると良いでしょう。 また、既存のコンテンツを再利用し、パーソナライズ度を高めるのも効果的です。
  4. 成果の測定とROIの評価の難しさ
    ABMの効果を正確に測定し、ROIを評価することは難しい場合があります。 特に長期的な取り組みであるため、短期的な成果が見えにくいことがあるため、明確なKPIを設定し、定期的なレビューが必要になります。 また、ABM分析ツールを導入し、データドリブンな評価を行うことで、効果測定の精度を高めることも効果的です。

Redis社のケーススタディ

Redis社でのABMの取り組みは、現状の1 to 1アプローチへと進化するまで、数回の試行錯誤が行われてきました。初期段階では50のアカウントに対して1 to fewアプローチを試みましたが、セールス部門とのインセンティブの不一致により一部で摩擦が生じてしまいました。その後、マーケティング部門とセールス部門の目標と報酬構造を調整し、ターゲットアカウントを絞り込んだ1 to 1アプローチへと移行したことで、ABMプログラムがより効果的に機能するようになりました。 

Redis社のABMの成功原因として、セールスとマーケティングの強い連携が挙げられます。営業部門は金融サービスの大口顧客の顧客体験を向上するためより高度なパーソナライゼーションを実現するべくマーケティング部門からの支援の元アカウントに合わせた戦略的な施策を実行しました、営業担当者「失敗を恐れずに早く試して改善する」ことが成功の鍵だと述べています。

 

一方、マーケティング側ではSlackなどの社内コミュニケーションツールを活用し、営業担当者が抱える課題に興味を持つことで、自然な関係を築くことが効果的だと指摘しています。営業担当者にマーケティングは自分の課題解決をサポートしてくれる存在として認識してもらえれば、、双方が共に成果を出す関係が構築することができるのです。Redis社では、今後もABMのさらなる発展に向けた取り組みが計画されています。AIや機械学習を導入し、パーソナライゼーションの自動化を強化することで、より高度なカスタマイズを実現し、顧客体験を一層向上させる方針です。これにより、ターゲットアカウントごとのニーズをより精緻に捉え、最適なタイミングで適切なメッセージを届けることが可能となります。

また、ABMツールのさらなる活用により、インテントデータや行動データを基にした予測分析を強化し、セールスとマーケティングの連携をこれまで以上に円滑に進めることが期待されています。加えて、キャンペーンのパフォーマンス評価を継続的に行い、得られたデータをもとに戦略を改善することで、ABM施策の効果を最大化し、より持続的な成長を目指していく構えです。

まとめ

本記事では、ABMの導入から成功のための手法、そしてRedis社のケーススタディに基づいたベストプラクティスについて解説しました。ABMの成功には、ターゲットアカウントの正確な選定、セールスとマーケティングの緊密な連携、データを活用したインサイトの導出が不可欠です。

Redis社の成功事例からもわかるように、ABMにおける柔軟な対応や継続的な改善が、長期的な成果を生み出します。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
  |  
廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。