これから2回に分けて営業強化に欠かせない役割、セールスオペレーション(SalesOps)についてご紹介します。第一回目はその役割についてご解説しましょう。
今日のBtoBビジネスは競争がますます激しくなり、営業・マーケティングにはデータドリブンな意思決定と行動が欠かせなくなりました。日本では、営業に隣接する部門として営業企画部門や営業推進部門などを設置している企業は多いですが、海外ではセールスオペレーション(SalesOps)という部門の立ち上げが非常に増えています。
データを扱うのはマーケティング部門が多く、海外ではマーケティングオペレーション(MOps)という役割も普及していますが、この記事では、SalesOpsについて紹介したうえで、MOpsとの役割の違いや、どのようにSalesOpsとMOpsが連携していくと生産性が高まるかについて紹介します。
SalesOpsは営業に関わる多くの領域をカバーしているため、チームや組織によって異なる意味を持つことがあります。SalesOpsは1970年代から独立した組織として設置されはじめました。SalesOpsの業務では、主に営業データの分析を通じて営業担当者にインサイトを与え、それに基づいた営業方針の設定などに重点を置いてきましたが、現在その役割と目的はさらに幅広くなっています。
今日、SalesOpsを導入している企業での主な役割は、営業戦略の立案や営業プロセスの改善を通して、現場の営業チームがより効率的、効果的に営業できるようサポートすることです。つまり、戦略面と実務面の両面で営業チームをサポートしています。営業組織にSalesOpsを導入するメリットには、以下が挙げられます。
SalesOpsは営業のさまざまな領域で改善と最適化を支えます。ここでは、主な業務について簡単に説明します。
SalesOpsは各製品の売れ行き、セールスプロセスの進行状況、マーケティングチームが獲得したさまざまなソースのリードのROIなどを測定し、データを分析します。現在の戦略がうまくいっているのか、改善が必要なのかを判断し、目標達成のために戦略を修正したり、新しい戦略を立案したりすることが重要な役割の1つです。
売上フォーキャストは、四半期や年間の目標達成のために非常に重要です。フォーキャストを通じて、あらゆる営業活動が目標達成の進捗を確認し、場合によっては修正する必要があります。
フォーキャストは過去のデータの把握からはじまります。前年や前々年、あるいは前四半期のパフォーマンスの傾向を分析することで、将来の売上を予測します。また、現在の四半期や年間の進捗をフォーキャストの数字と照らしあわせることで、営業チームは必要な時に必要な調整を行うことができます。また、マーケティングチームやサプライチェーンもSalesOpsが提供する売上フォーキャストに応じて適切な対応をとるため、大変重要なデータになります。
SalesOpsチームは、マネジメント層とともにCRMやデジタルマーケティングツール、セールスエンゲージメントツール、リードエンリッチメントなど、必要となるテクノロジーを駆使した営業関連ツールの要件定義、導入、管理、運用を行います。また、これらのツールを効率的に活用するため、チームをトレーニングすることもあります。
B2Bの営業プロセスでは、顧客への提案のためにツール、フレームワーク、ドキュメント、コンテンツなどを使用します。これらを準備するのもSalesOpsです。
以下に営業プロセス全体を通して使われるドキュメントの例を紹介します。
セールストレーニングはSalesOpsのもとで整備され、実践的なシナリオに即して営業担当者の育成に重点を置くため商品トレーニングとは異なります。一般的には商品トレーニングを受けた後にセールストレーニングに参加し、顧客のニーズの理解に集中します。交渉術や緊急性の喚起づけなどをカバーし、顧客の状況を見極めて問題点を洗い出し、解決策を提示する方法を理解させることが重要なポイントです。
SalesOpsは営業部門に課された目標に対してパフォーマンスを追跡します。直接的には営業担当者のKPIになりますが、同時にSalesOpsチームが効率的かつ効果的にサポートできているかを把握します。
平均商談期間は、営業担当者が初回の打ち合わせから受注までに必要な平均期間を示します。商談期間を短縮すると同じ期間に多くの商談を受注し収益を拡大できます。商談期間を把握することで、営業プロセスのフローチャートを明確に把握することができます。この指標は営業プロセスの全体像を把握することができますが、顧客LTVなどの指標とあわせて評価することでより現実的な観点から利益の最大化について考えることもできます。
(全商談のファーストコンタクトから受注までの日数)÷(全商談数)
受注率はどこで計算するかにもよりますが、全体もしくはマーケティングから受け取ったMQLなどから受注できた割合です。これは営業チームの熟練度を示す指標であり、営業リーダーにとって最も重要な指標の1つです。
受注率は、戦術や営業担当者のパフォーマンスを評価するだけではありません。前工程でどの程度見込みの高いリードを獲得しているかという指標でもあります。この指標は他の営業KPIをまとめ、一定期間に営業チームが生み出した成果を示します。
(受注数)÷(総リード数)
顧客獲得に費やした費用は営業効率を示す重要な指標です。この指標は、売上を達成するために必要なリソースを評価することで、営業プロセスの費用対効果を検証するものです。顧客獲得コストにはSalesOpsの業務に関わる費用も含まれます。コストが利益を上回った場合、活動の問題点を特定し、戦略を立て直す必要があります。
(獲得した顧客数)÷(オペレーション費用や諸経費を含むセールスとマーケティング費用の合計)
すべてのリードが自社ビジネスに適しているわけではありません。相性の悪いリードを追い求めると、商談サイクルの長期化、受注率の低下、顧客獲得コストの高騰などが起きてしまいます。提案可能な商談に転換したリードの数は受注率とも連動しており、追いかけるリードの質を定義することができます。
(商談化したリードの総数)÷(リードの総数)
各受注から得られる平均収益を計算し顧客獲得コストと組み合わせることで、受注1件あたりの利益を推定することができます。平均受注金額は顧客サービスのパフォーマンスも分析することができます。既存顧客に対してより高価な製品を販売し受注金額を高めることができれば、SalesOpsの強さをアピールできます。
(特定の期間の売上合計)÷(その期間の受注総数)
売上フォーキャストは成長曲線を左右します。リスク管理、予算管理、リソース計画など正確な売上フォーキャストによって事業パフォーマンスの適切なリズムを整えることができます。SalesOpsチームは営業数字を予測し、その目標を達成するためのロードマップを作成する責任を負っています。売上フォーキャストの精度は営業戦略の精度の高さと、実際の目標にどれだけ近づけることができるかが反映され、ロードマップの矛盾点を特定し、目標を見直すことができます。
会計期間の初日のフォーキャスト金額を最終日の売上実績で割る
既存顧客との関係が良好であれば、新規獲得がなくても収益を増加させることができます。既存顧客からの収益が増えれば、総収益は自動的に増えていくのです。これが顧客LTV(顧客生涯価値)の意味するところであり、1人の顧客からどれだけの利益を得られるかを示しています。顧客満足度が高い顧客は顧客LTVが向上しますし、解約率が低ければそれだけLTVが高くなる可能性もあります。つまり、この指標はSalesOpsが提供する顧客体験の質を明らかにするのです。LTVを最大化させるには効率的なリードジェネレーションも重要です。この指標は平均受注金額や平均商談期間といった他のKPIとも関連してきます。
平均受注金額×1年間の受注回数×顧客との平均取引期間
翌月や四半期にどれくらいの売上を見込めるか、商談ステージで重みづけをした売上予想値は、来期の予測や目標設定に役立ちます。パイプライン値を加重平均することで、前月・前四半期と比較して、SalesOpsチームのパフォーマンスが明確になります。パイプライン値はプロスペクティングとリードジェネレーションの直接的な指標となります。パイプライン金額が高いほどSalesOpsの業務がうまくいっていることを意味し、低下傾向にある場合には、見直しが必要であることを示唆します。 フォーキャスト精度と組み合わせることで、売上パイプライン全体の健全性を把握することができます。
(ステージごとの商談の受注率)×(ステージごとの商談数)×(期待商談金額)
いかがでしたか?MOpsのベストフレンドであり、MOpsと同じようにチームの生産性を高めるSalesOpsの重要性はますます高まるばかりです。次回は、MOpsとSalesOpsの連携方法についてご紹介いたします。