プログラマティックが本格化した2010年頃からバイヤー側のDSPとセラー側のSSPが各々のバリューを提供し確固たるポジションを築いてきました。2023年現在、界隈では新たなエコシステムが形成されようとしています。
今や多くの広告主が使用しているプログラマティックは、アドエクスチェンジプラットフォームがRTBソフトウェアの開発を開始した2007年から2010年にかけて本格的に始まったとされています。
2023年現在、指数関数的に増加するスクリーンタイムに伴い、十分な規模とデータのスケールを持つメディアビジネスはアドネットワークの構築を開始しており、例えばMarriott、Netflix、Xboxといった新しいアドネットワークが登場しています。
プログラマティックはCTV、DOOH、インゲーム、デジタルオーディオなどのメディアフォーマットにおいて、確固たる地位を築きつつあります。同時に、サードパーティクッキー廃止が近づいていることによる不確実性がある状況下でも、新しいセマンティックソリューション、ファーストパーティデータインフラ、およびIDテクノロジーによって、その地位を揺るがぬものにしています。
一方、長らく別個に共存してきたDSPとSSPのポジショニングは今大きく変わりつつあります。アプリやウェブ環境での課題が山積する中、広告会社はテクノロジーの強化と統合を迫られ、DSPとSSPのディスインターミディエーション(仲介者をなくす動き)が始まっているのです。
改めてプログラマティック広告と関連ツールについて確認しておきましょう。
プログラマティック広告とは、テクノロジーを使ってデジタル広告を自動的に売買するプロセスのことです。プログラマティック広告は、ユーザーのブラウザに広告のインプレッションがロードされることで開始となります。プログラマティック広告の一連の流れは以下の通りです。
DSPとはDemand-Side Platformの略称で、主に広告主に使用される、広告を自動で購入するために使用されるソフトウェアです。広告主はDSPを通じて複数のパブリッシャーからのオークションに入札することができます。基本的に広告主は、広告の設定やオーディエンスターゲティングの活用、入札の管理・最適化などのためにDSPを必要とします。
SSPとはSupply-Side Platform略で、パブリッシャーが異なるアドエクスチェンジで広告主に広告在庫を販売することを可能にするソフトウェアです。SSPは、広告在庫を大規模なデマンドに対応できるようにすることで、パブリッシャーの広告収入を最大化するのに役立ちます。各SSPは他と競争し、バイヤーの独自のネットワークを持っています。
DMPとはDemand Management Platformの略で、匿名の個人のプロフィールを構築し、各個人に関するサマリーデータを保存し、そのデータをDSPやSSP等の広告システムと共有するためのソフトウェアです。
DMPは、ファースト、セカンド、サードパーティーのデータを収集して、オーディエンスのセグメンテーション、類似オーディエンスの構築、ペイドメディアの最適化などに活用されます。DSPはDMPからデータを抽出する必要があるため、theTradeDeskなど多くのDSPが自社でDMPを保有しています。
DSPとSSPの最終的な目標は同じで、広告活動の効率化です。DSPとSSPの明確な違いは異なるエンドユーザーです。DSPはマーケティング担当者や広告主がキャンペーンの効率を高めるために使用するツールであるのに対し、SSPのエンドユーザーは広告枠を販売したいパブリッシャーです。エンドユーザーが異なるがゆえに両者のケイパビリティも異なります。DSPは、広告主が多くのパブリッシャーから最も効率的に広告インプレッションを購入できるように働き、SSPはその逆で、出版社が広告主に対してできるだけ高い価格で広告在庫を販売できるように機能します。
GoogleによるサードパーティCookieの延期はあるものの、業界は既にファーストパーティデータ時代に突入しています。今後のアドテク業界は持続可能なユニバーサルID、ファーストパーティのインフラ、データ共有のための透明性を持った同意メカニズムを実施する必要があります。
ブラウザやデバイスが提供するナレッジが薄れつつある今、ファーストパーティデータとユーザーインテリジェンスがアドテクノロジーの新たな生命線になるでしょう。ファーストパーティデータを使用して入札リクエストを安全に処理できるDSPとSSPは、広告市場でより大きなシェアを占めるようになることが予想されます。
このような状況下で、アドテク業界におけるバイヤー側とセラー側の境界線はますます曖昧になってきています。2022年初め、業界最大の独立系DSPであるtheTradeDeskが広告主とプレミアムパブリッシャーを直接つなげるOpenPathを開発し、それと同時にGoogle Open Bidding(OB)の使用を止めました。これは広告主側の無駄な費用を最小限に抑えると同時に、パブリッシャー側の収益を最大化することを目的としており、多くの広告主やパブリッシャーから支持を得ています。
一方で、これはSSPの従来の役割を揺るがすものであるということから否定的な意見も散見されます。例えば、一部のエージェンシーはSPO(Supply Path Optimization:アルゴリズムを用いてバイヤー側がオークションで勝てる可能性を高めるアドテクの一種)を中心に独自のバリュープロポジションを構築しており、DSPがその真ん中に入ることを望んでいない場合があります。
OpenPathのようなDSPのダイレクトインテグレーションは今後ますます増えてDSPとSSPの境界線はますます曖昧になり、SSPの存在意義を疑問視する声も聞こえてくるでしょう。一方でこれらの主語はあくまで広告主であり、パブリッシャー側のバリュープロポジションに焦点を当てた場合にはSSPは引き続き重要な役割を持ちます。今後もDSP、SSP、ダイレクトインテグレーション、DMPといった複数のテクノロジーを連携して両者を補完していく必要があります。
いかがでしたでしょうか。プレミアムインベントリにアクセスできるDSPは、独自のSSPを開発することで多大な利益を得ることができますし、SSPも、カスタムDSPの開発によってバイサイド向けの機能を展開することを検討する必要があります。こういったテクノロジーの統合・多様化の動きはDSPまたはSSP単体に限ったものではありません。
2023年のプログラマティックプラットフォームはビジネスモデルを多様化し、バイヤー、セラー、パブリッシャー、データプラットフォーム、その他すべてを、効率的で透明性が高い状態で結ぶエコシステムの構築が求められています。