BtoB企業のブランドマーケティング

最終アップデート: 
July 19, 2023

この会社、いいマーケティングしてるなぁと感じるBtoB企業を想像してみてください。必ずと言っていいほど、自分たちのミッションやバリュー、会社のカルチャーなどをコアにもち、愛されるブランド作りに力を入れている企業ではないでしょうか。

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サンフランシスコで働いていた時、米国のBtoB企業は従業員数5名のスタートアップから大企業まで、どれもブランディングがしっかりしているなぁと感じました。ターゲットオーディエンスがエンジニアのガチガチのIT企業でもブランドアイデンティティが確立されており、感情に働きかけるようなコピーライティングはもちろん、コミュニケーショントーンも一貫され、細部までブランドマーケティングが徹底されていたのです。


長年、BtoB企業はブランディングよりも直接売り上げにつながるプロダクトやセールスに投資をしてきました。BtoBではセールスプロセスの関わるステークホルダーが複数人いる上、個人的な嗜好などによって大きく左右されないため、ブランディングの必要性は低いと考えられてきたのです。そのため、プロダクトのスペックを羅列したり用語を詰め込んだばかりで単調にきこえるコピーライティングなどを使っていたからか、BtoBマーケティングはBoring to Boringの訳だ、なんて言われていたことも。


現在はBtoB企業でブランドマーケティングを実践している企業も多くなりましたが、まだまだその重要性が一般的に認識されているとは言えない現状です。ブランディングがうまくいっているところはデマンドジェネレーション活動の効率が上がったり、平均顧客獲得単価が下がったり、プレミアム価格も付けやすくなるなどの効果も認識されています。今日はBtoBブランディングの重要性を実践している企業の例を交えてご紹介したいと思います。

BtoBブランディングの重要性

デジタルトランスフォメーションが進むにつれ、顧客が営業担当と会う前に検討する内容や期間が多くなったいま、ウェブサイトで発信するメッセージ、発信方法、コンテンツやイベントなどは全てブランドマーケティングを考える上でとても重要なアイテムです。SaaSモデルやサブスクリプションサービスが増えたことで、今までは気合いで一度売り切ればOKだった営業スタイルから、顧客のカスタマージャーニーに沿って、ポストセールスもカスタマーケアが求められる時代になっているのは皆さんご存知だと思います。初めて商談をクローズした時点がその顧客との関係の開始地点とも言えるでしょう。このように長期間にわたって顧客と関係を構築するのに伴い、はっきりとしたブランドメッセージがないまま、ただツール・サービスを提供している会社でいては容易に競合に埋もれてしまいます。またデジタルトランスフォメーションが進むにつれて市場のエントリーバリアが下がり競争が激化しているため、ミッションやバリューをコアに持ち一貫したメッセージと世界観をオーディエンスに伝えることは競争激化の中で勝ち残るためにも、企業の信用を得るためにも大事なステップだと言えるでしょう。

BtoBのブランディングに成功している例としてSalesforce.comが挙げられます。Salesforce.comで働いたこともなければ、キャリアページもおそらく訪れたことがない私でも、彼らの”Blaze your Trail”というタグラインや、Trailblazerコミュニティはパッと頭に浮かびます。Salesforceはアメリカの国立公園のミッションと自らのミッションにを重ね合わせ、自然いっぱいの国立公園をブランドイメージとして採用しています。大型イベントでSalesforceのブースに行けばスタッフはまさにハイカーのようなパーカーを着ていて、キャンプ道具が置いてあったりしますよね。一見CRMを売っている会社とは思えない見た目ですが、誰にもコピーできないブランドを確立しているのです。


引用: Salesforce公式ホームページ


Salesforceは企業規模もとても大きいですから、初めからこのスケールでブランドマーケティングを実施することは難しいでしょう。ただこのように一貫したメッセージで会社独特の色や特色を出している点を小さなところから取り入れてみると良いでしょう。以前、BtoBマーケティングにユーモアを大きく取り入れている会社の一例としてMonday.comやZendesk、Mailchimpをブログで紹介しましたが、これもユニークなブランディングの一つです。どんなスタイルであれ、オーディエンスに愛されるブランド作りがBtoB企業にも求められているのは明確でしょう。


また、これに関係して企業としてのミッションやバリューを持つと同時に、環境問題やジェンダー、人種差別問題など社会を取り巻く問題について企業としての立場を明確にすることも昨今求められていることです。例えばAmazonはアメリカの高等教育費の高騰を受けて従業員75万人の高等教育費用を全負担すると発表しました。また、Salesforceはアメリカ・テキサス州の人工中絶法の変更を受け、現在テキサス州で勤務している従業員で州外に移転したい従業員の移転費用を全負担すると発表など、CSRに力を入れながら同時に企業イメージやカルチャーをアピールすることに成功しているのです。


まとめ

この会社、いいマーケティングしてるなぁと感じるBtoB企業を想像してみてください。必ずと言っていいほど、自分たちのミッションやバリュー、会社のカルチャーなどをコアにもち、愛されるブランド作りに力を入れている企業ではないでしょうか。製品やサービス内容にどれだけコンペティティブエッジを持っていても、企業イメージで人を惹きつけることができなかったらせっかく行っているマーケティング活動の効率も上がりません。会社全体でこれを明確に定め、毎日のマーケティング業務のなかに落とし込むことができると良いでしょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。