Big Ops(ビッグオプス)とは?

最終アップデート: 
November 11, 2022

混沌の中に着実な進化を続けるデジタルマーケティングの世界。2010年頃から台頭してきた「Big Data(ビッグデータ)」にまた一つレイヤーが加わり「Big Ops(ビッグオプス)」の時代が今到来しています。

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2010年頃から「Big Data(ビッグデータ)」という言葉が世の中に認知され始め、いち早く対応する企業も多くありましたがデータを膨大に集めるだけ集めて活用はままならないケースも多く見受けられます。2020年代はまた一つレイヤーが加わり「Big Ops(ビッグオプス)」の時代が到来しています。欧米では多く議論されている分野ですが日本ではまだまだ浸透していないのが現状です。表層的な理解に留まらず、ぜひこの記事でその本質を理解していただきオペレーショナルエクセレンスを実現していただければと思います。

2020年ビッグデータの時代〜現在

本題に入る前に、ビッグデータについて今一度振り返っておきましょう。ビッグデータとは膨大で多様性を持ち、スピーディーに流出入を繰り返すデータのことを指します。

ビッグデータは基本的に特定の目的のために集められます。例えばNetflixやP&Gは顧客の要望を把握し今後の需要を予測するためにビッグデータを活用してきました。具体的には、フォーカスグループインタビュー、ソーシャルメディア、テストマーケティング、店舗からの情報を用いて、将来の成功モデルを構築しています。

P&Gの例のように、データ活用モデルが確立されている場合ビッグデータはビジネス成功には大変有用であり、この概念が広く認知されるようになった2010年代から現在に至るまで組織に流入・流出するデータの量、速度、多様性が飛躍的に増加してきました。今後もビジネスに活用されるデータ規模は拡大していくことになることは間違いありません。

Big Ops(ビッグオプス)とは

ここで今後着目していきたいのがBig Ops(ビッグオプス)の考え方です。価値のあるビッグデータが存在していても使いこなせなければ意味がない、むしろデータ管理に係るリソースや流出の危険性を考えるとマイナス要素となります。企業により収集されたデータのうち43%が未使用のままであるというIDCとSeageteによる調査報告からも、実際のデータ活用が如何に難しいかということがわかります。ビジネスの成功や顧客体験向上において効果的なデータを抽出し活用するには、Big Opsの考え方を取り入れることが必要です。

引用:https://customerthink.com/martech-2030-trend-4-from-big-data-to-big-ops/

ビッグオプスの定義は、使う人や場面によって異なるでしょう。広義では「複雑で膨大なビッグデータを有効活用するための仕組み」ですが、「ビッグデータと相互作用のある各オペレーションを分類し、それらを連動させながら企業活動を行うこと」とも言えるでしょう。

ビッグデータ活用時の難しさが「収集、保存、分析されるデータの規模と複雑さ」であるのに対し、ビッグオプスではそれらの上に「データと相互作用するツール・オペレーション及びオートメーションの規模と複雑さ」が加わります。

Big Ops(ビッグオプス)の構成

Bip Opsは、いわばあらゆるオペレーションモデル(=スムーズに企業活動を実行するための仕組み)の集合体です。私共がこのブログでも度々ご紹介してきたマーケティングオペレーション(Mops)ももちろんこの一部ですし、セールスオペレーションやカスタマーサクセスオペレーションなど、レベニュープロセスに関わる様々なチームがそれぞれ必要なデータを整理してオペレーションフローを各々構築した結果、組織全体としてBip Opsという考え方が広まったとも考えられるでしょう。

引用:https://chiefmartec.com/2020/11/big-ops-converging-digital-ops-domains-toolsets/

Big Opsの経緯

過去数年間注目され続けてきたのがDevOpsです。Big Opsについてご存知なかった方でも耳にしたことがあるのでは無いでしょうか?DevOpsはソフトウェア開発(Development)とオペレーションを組み合わせたもので、ソフトウェア開発や要件定義を展開する上で使用するオペレーションモデルやその活動内容を指します。DevOpsはその他チームのオペレーションと密接に関わるようになり、Product OpsやDesign Ops、Web Opsなどのオペレーションチームやモデルも次々と構成されていきました。

マーケティングに限ると、マーケティング活動全体を管理するマーケティングオペレーションという大枠の中には、広告収益に関わるAd Ops、コンテンツの計画・作成・運用に関わるContent Ops、チャネルの運用モデルを管理するChannel Ops、外資企業であれば各市場に落とし込むためのLocalization Opsなども置いているところもあるかもしれません。

さまざまなオペレーションチームやモデルがある中でも今MarTechの世界で最も注目されているのはRevOps(Revenue Operations: 収益に関するプラクティス)でしょう。マーケティングとセールスは昔から対立することが多く、マーケティングオートメーションやセールスフォースオートメーションというソフトウェアはレベニュープロセスを少しでも明確化することでその対立の解決にも貢献してきました。しかし、どんどん複雑化するレベニュープロセスの中でマーケティングとセールス、そしてカスタマーサクセスを一貫して管理するレベニューチームとという組織が構成され、このチームのオペレーションを管理するレベニューオペレーションも出てきました。Marketing Ops, Sales Ops, Customer Success Opsを1つの括りにまとめ、CROやCCOに報告するRevOpsはレベニュープロセス全体を見渡せる位置にあるため、エンドツーエンドでカスタマージャーニーを最適化することができ、より高いカスタマーエクスペリエンスを提供することができるとして評価されているのです。

今まではチャネルマーケターやフィールドマーケターがそれぞれ決めていたマーケティングプロセスをMopsが一元化し標準化されたモデルを敷くことでデータの整理や活用はもちろん、ノウハウの蓄積や属人化された組織からの脱却が図れます。データが指数関数的に増えていく現代において、マーケティングはもちろん、企業活動全体を円滑に回すためには部門単位ではもちろん、各ファンクションにもオペレーションモデルを確立させ、必要なデータの管理やその他ファンクションとの連携が必要不可欠になっているのです。

まとめ

ビッグデータもBig Opsも、複雑で膨大であるという点では共通していますがその本質と向き合い方は異なります。

ある広大な森があったとして、そこに理想の山小屋を建てるのに最適な木があるか?と悩んだのがビッグデータならば、Big Opsはそれを前提条件に理想の山小屋を建てる際の業者・土地・素材選びの方法はどれが良いのか?どう組み合わせたら良い相互作用が生まれるのか?と考える役割です。私たちはまずビッグデータを理解すること、自社に必要、適切な使用方法を把握すること、そしてそのビッグデータを組織全体、各部署で活用するために必要なオペレーションモデルを構築するという大きな課題を負っています。1ステップごと進めて自社に最適なオペレーションモデル作りを目指しましょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。