データプライバシー時代のゼロパーティデータとAI
October 10, 2024
デジタルマーケティングは、近年急速に進化しています。特に、顧客データの収集と活用に対する期待と懸念が増大する中で、マーケターはデータプライバシーと透明性を確保しなければいけません。その中で注目されているのが、「ゼロパーティデータ」とAI技術です。本記事では、ゼロパーティデータとは何か、AIとの組み合わせがどのようにB2Bマーケティングに変革をもたらすのか、そして将来のトレンドについて探っていきます。
ゼロパーティデータとは？
ゼロパーティデータとは、2017年にForrester社によって提唱され、顧客が自らの意思でブランドに対して直接提供したデータのことを指します。
具体的には、顧客の好みや意図、個人的なコンテキストなどを含み、アンケート、調査、会員登録時の情報などが該当します。これは、企業が推測するのではなく、顧客が積極的に共有した情報であるため、特に信頼性が高く、顧客とのパーソナライズされたコミュニケーションを構築するために活用されます。
一方、ファーストパーティデータは、ユーザーの行動やインタラクションを通じて自動的に収集されるデータを指し、顧客が明示的に開示していない場合もあります。また、サードパーティデータは、外部ソースから収集された統計的なデータであり、信頼性やプライバシー面での課題が指摘されています。ゼロパーティデータは、これらの他のデータ形式に比べ、正確性が高く、顧客の意思を尊重する点で優れています。
AIを活用したゼロパーティデータの収集方法
ゼロパーティデータの効果的な収集には、AI技術が大きな役割を果たしています。たとえば、AI搭載のチャットボットやバーチャルアシスタントを活用することで、顧客とのリアルタイムな対話が可能になります。チャットボットは、顧客の好みや興味を引き出し、購買意欲を確認する質問をすることで、ゼロパーティデータを自然に収集します。
さらに、インタラクティブなアンケートやクイズも、AIの力を借りて個々のユーザーに合わせた内容にパーソナライズすることができます。これにより、顧客は自身と関連性の高い質問に答えながらデータを提供します。また、そのデータをリアルタイムに分析し、即座にマーケティング活動に活用することができます。このようなAIを活用した方法は、データ収集プロセスを効率化しつつ、顧客体験の向上にも貢献します。
ゼロパーティデータがもたらすマーケティング効果
ゼロパーティデータをマーケティングに活用することで、企業は顧客に対してよりパーソナライズされた体験を提供することができます。例えば、Epsilon社の報告によると、80%の消費者はパーソナライズされた体験を提供する企業から購入する可能性が高いとされています。また、Accenture社の調査では、73%の消費者がデータの使用方法が透明であれば、より多くの個人情報を提供する意向があると答えています。ゼロパーティデータの活用はデータプライバシーの懸念を解消し、法規制にも対応することができます。
Forresterの調査によれば、ゼロパーティデータとファーストパーティデータに注力することで、データ取得コストを大幅に削減できるとされています。マーケターはこれらのデータを活用して、よりパーソナライズされた提案やマーケティングメッセージを提供することで、顧客のニーズに応えることができるのです。
将来のトレンド：AIとゼロパーティデータの融合
ゼロパーティデータの未来には、AI技術との融合がますます重要になってきます。AIは、ゼロパーティデータを分析し、よりパーソナライズされたマーケティングを実現するための鍵となります。例えばAIは、顧客が提供したデータをもとに、個別のニーズに応じた商品をお勧めしたりやカスタマイズされたコンテンツをリアルタイムで提供することが可能です。
また、ゼロパーティデータを他のデータ形式と統合することで、顧客の全体像を把握することができます。ゼロパーティデータ、ファーストパーティデータ、さらにはセカンドパーティデータを組み合わせることで、AIは顧客の行動や嗜好をより正確に理解し、すべてのタッチポイントで一貫した体験を提供できるようになります。
B2Bマーケティングにおける実践的なポイント
ゼロパーティデータを効果的に活用するためのポイントをご紹介します。
- 顧客との信頼関係を構築する
ゼロパーティデータの収集は、顧客が企業に対して信頼を持つことが前提となります。透明なデータ利用ポリシーを掲げ、顧客に対してデータの使用方法を明示することで、信頼を得ることができます。 - AIを活用したパーソナライズ体験の提供
ゼロパーティデータをAIで分析し、個々の顧客のニーズに合わせた提案やマーケティングメッセージを提供することで、顧客満足度を向上します。 - オムニチャネル戦略の強化
ゼロパーティデータを活用して、顧客がどのチャネルでどのようにエンゲージしているかを把握し、統一されたマーケティングメッセージを提供することが求められます。AIでリアルタイムでデータを処理し、最適なコミュニケーションを実現します。
まとめ
ゼロパーティデータは、B2Bマーケティングにおいて、データプライバシーの向上とパーソナライズされた顧客体験を実現するための重要なツールです。特にAI技術との組み合わせにより、より正確で効率的なマーケティングが可能になります。ゼロパーティデータを適切に活用し、信頼を構築しながら顧客体験を向上させる企業が、これからのマーケティング環境でリードしていくでしょう。
株式会社マルケト（現アドビ株式会社）にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション（MOps）の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」（MarkeZine BOOKS）と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識（MarkeZine BOOKS）がある。
