アトミックコンテンツマーケティングとは?

January 26, 2023

Atomic content marketingとは
Atomic content marketing(アトミックコンテンツマーケティング)(以下ACM)とは、全ての「コンテンツ」を最小要素「Atom(アトム=原子)」の集合体と捉えることでコンテンツの編成や拡張を容易にするマーケティングの方法論です。ACMでは、メッセージや画像などの「Atom(アトム=原子)」を作成の上カスタマイズし、それらを動的に組み合わせることで、動画、メール、Webページ、その他のマーケティングアセットを作成していきます。

「適切なコンテンツを適切な場所に配信すること」がマーケティング活動の定石である一方、複数のフォーマット、チャネル、プラットフォームに迅速かつ柔軟に対応できるハイクオリティなアセットを一貫して制作することは容易ではありません。例えば複数の広告プラットフォームで複数のフォーマットを使用する際には、それぞれに対応したクリエイティブが必要とされ、数種のファイルタイプ作成やサイズ変更などの作業に時間を要します。ACMはコンテンツを個々の要素に分解し、それらを高度に組み合わせることによりこの問題を解決し、効率的にパーソナライズされた良質な顧客体験を生み出すことを可能にします。

ACMの活用事例

数週間前からソーシャルアカウントをフォローして気になっていたファッションブランドがあるとします。頻繁にチェックして購入意欲が高まっていたところに、自分の好みのテイストの最新ルックが紹介されているメールを受信。さらに割引クーポンもついていたらさらに購入意欲を刺激しますよね。このように商品レベルまで要素を分解して各顧客ごとにデザインされたACMはカスタマーエクスペリエンスを向上し購買行動に結びつけることができます。

ACMの利点

このように、柔軟かつ迅速にコンテンツをパーソナライズできることがACMの大きな利点です。個々人に関連度の高い情報をそれぞれ提供することにより、カスタマーエクスペリエンスを格段に向上することが期待できます。ACMの利点は以下のことが言えるでしょう。

  • Scalability(拡張性)
    ACMは少ない労力で幅広いコンテンツ作成を実現する有効な手法です。最小要素「Atom(アトム=原子)」や、それを組み合わせた次の単位「分子」などにコンテンツを分解し、さらにそれを組み合わせて段階的にコンテンツインフラを構築することで労力を抑えた効率的な作業が可能となります。

  • 詳細レベルでのパーソナライゼーション
    サードパーティークッキーの廃止が間近に迫る中、ターゲティングの選択肢が少なくなり、自社内部で取得できるユーザーデータの有効利用が急務となっています。ACMでは、お客様の状態、ペルソナタイプ、取引履歴、潜在的なお客様のLTVなど自社プラットフォーム内で入手可能なデータを適宜活用し、高度にカスタマイズされたカスタマーエクスペリエンスを実現します。上記のメールの例は、画像、メッセージ、ヘッドライン、割引情報、CTA(コールトゥアクション)などの「Atom(アトム=原子)」を意図的に組み合わせ、顧客毎にパーソナライズしたものです。そうすることによって、シームレスで魅力的な体験を実現しているのです。このメールの裏側には、何十ものコンテンツ「ブロック」があり、マーケターが決めたルールやロジックに基づいて、「Atom(アトム=原子)」を配置するエリアが設定してあります。


ACMの課題、考慮すべき点

  • 早期の導入
    現状に不便を感じてからACM導入を決意しても、システム構築には時間かかるため、時すでに遅しという状況になるかもしれません。将来的に迅速かつ柔軟なカスタマイズが必要になるという予測が立っている場合は早めの導入を検討すべきでしょう。また、既存のコンテンツ運用担当者に教育が必要になることもよくあるため、それも含め準備にかかる時間を念頭に入れておく必要があります。

  • 適した人材の確保
    開発チームは、クリエイティブスキルに加え、デジタルやデータのスキルを有している必要があります。クリエイティブテンプレートのデザインにデータを活用したり、メタデータに基づいて各コンテンツの要素を選択したりすることが必須のスキルとなります。更にはテストと学習の能力、デジタル指標を使って成功を測定する能力、そしてこれらの情報を活用してクリエイティブアセットを最適化する能力が求められます。
  • テクノロジー
    柔軟なシステム構築には、高レベルのテクノロジーが必要です。各種プラットフォーム毎に必要とする機能は異なりますが、例えばエンゲージメントプラットフォームにおいては、現在進行中の、あるいは過去の顧客の対応をリアルタイムで認識し、カスタマージャーニーの各ステップに応じた適切なコミュニケーション設定を行う必要があります。これらの要件を満たすレベルのテクノロジー導入の可否は事前に確認する必要がありそうです。

まとめ

個別に最適化したコンテンツによる顧客とのコミュニケーションは、彼らと強固な関係を築き、他社との明確な差別化を実現し、ビジネスの安定とスケールに繋がります。ただし、フルアセットで展開するとなるとテクノロジー導入や人材確保などの点でハードルが上がります。まずは最小規模のアセットでクイックに開始できるようなトライアルを実施し、それらの結果から随時調整を行い、本格実施に向けて徐々に準備を行うことをお勧めします。

また、既存のアセットにおけるダイナミックコンテンツ機能を明確にし、それらの機能を最大限に活用することも有効です。マーケティングオートメーション、Eメールマーケティング、コンテンツマネジメントの各ソリューションは、ACM機能をサポートする標準機能を備えていることが多いので、それらの機能の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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