ボイスサーチの今後

January 31, 2023

急速に発展するボイスサーチ

音声認識技術が一般に知られるようになったのは比較的最近のことです。私たちは過去数十年にわたりテキスト入力によるオンライン検索を行ってきました。しかし本来、人にとっては入力したりクリックしたりするよりも話す方が自然な行動なのですから、音声入力による検索行動が主流になりつつあるのは人類学的な観点で見ると当然の流れかもしれません。

また、パンデミックに伴い音声起動アシスタントのようなタッチレス・テクノロジーが重宝されるようになったことも音声認識技術の発展を加速させる一助となりました。

音声認識技術の発達により、人とテクノロジーの関わり方が変化しています。

Google Home、Homey、Amazon Echoシリーズなどのデバイスは、欧米諸国のリビングルーム、キッチン、寝室でますます存在感を強めており、Siri、AlexaなどのAI搭載型バーチャルアシスタントは、スマートフォン、自動車、掃除機にさえも組み込まれています。 以下のデータもボイスサーチの台頭を示しています。

  • 世界のオンライン人口の25%以上がモバイルデバイスでボイスサーチを利用(Microsoft社)
  • アメリカの消費者の3分の1がスマートスピーカーを所有(Statista)
  • デジタル音声アシスタントの利用は、2023年までにスマートホームデバイスに牽引されて3倍の80億人に達する(Juniper Research)
  • スマートホームデバイスの音声アシスタントを通じて購入される商品の取引額は、2025年に1640億ドルに達する(Statista)

これらのデータが示す通り、ボイスサーチは間違いなく今後も成長を続け、オンライン検索を根本的に変えようとしています。今こそ顧客エンゲージメントの在り方、 ローカルSEO、コンテンツマーケティングについて見直しを行っていきましょう。

ボイスサーチの現在

1. 提供できるインサイトのレベルが上がっている

例えば友人に「スマートフォンを買うなら何がいい?」と尋ねた場合、友人は質問者の好みを汲み取った上で製品を推薦してくれるでしょう。このレベルにスケールアップされたインサイトを提供するには、膨大な自然言語処理能力と、何十億もの検索結果をふるいにかけて正しい検索結果を探し出す情報検索技術が必要です。以下の図は、検索エンジンの難易度と、それぞれ必要とされるテクノロジーを示したものであり、例のように個人の嗜好や好みに合わせたインサイトの提供が一番難易度が高いとされています。

https://digitalmarketinginstitute.com/blog/prepare-for-the-future-of-voice-search

Googleの新しい検索アルゴリズム「ハミングバード」はセマンティック検索(ユーザーの検索意図を検索エンジンが理解し、求める検索結果を提供するテクノロジー)の先駆けです。このアルゴリズムにより、ユーザーが検索エンジンに入力する検索クエリが会話文のようにあいまいな場合であっても、位置情報・日時・前後関係や主体関係を参考にしながら検索結果を提供できるようになりました。

現代の消費者は、自分用にカスタマイズされた検索結果をより早くより簡単に手に入ることを求めています。このような状況を鑑みてボイスサーチ戦略を練ることが現代のマーケターには求められているのです。

2. ローカル検索に多く利用されている

Googleは2018年頃から「near me search(ユーザーの現在地を自動的に検出し、最も関連性の高い近くの施設や場所を検索結果としてユーザーに提示する機能)」の活用が大幅に増えたことを発表しています。

また、同年のBrightLocalの調査によると消費者の58%がローカルビジネス(近くの施設や場所)を見つけるためにボイスサーチを使用しており、そのうち46%は定期的に利用していることがわかっています。このローカルボイスサーチの増加は、ローカルビジネスにとって大きなチャンスとなるでしょう。

3. スマートスピーカーがボイスサーチの普及を促進している

2020年Voicebot.aiの調査によると、アメリカ人口の34.4%に相当する8770万人がスマートスピーカーを所有しています。世界的な5Gネットワークの導入に伴い、この数は今後さらに増加すると予測されています。

現在主な用途は、音楽の再生(85%)、天気予報(74%)、一般的なオンライン検索(72%)といった実用的な使用になっています。昨今では財務管理、航空券やホテルの調査、テイクアウトの注文などより本格的な検索も増えています。

4. ボイスサーチは主にモバイルロケーションから行われている

SiriやCortanaといったバーチャルアシスタントが昨今のボイスサーチの普及に大いに貢献していることは確かですが、ボイスサーチの基本はスマートフォンです。テキストベースのサーチとは異なり、ほとんどのボイスサーチはモバイルで行われます。2016年時点で既にGoogleはAndroidアプリでの検索の20%がボイスサーチで行われていると発表しています。Googleはボイスサーチの利用可能地域をより多くの国に広げており、現在125以上の言語で利用可能となっています。

ボイスサーチのベストプラクティス

ここまでボイスサーチの発展とその背景、現在の在り方を確認してきました。では実際にマーケティング担当としてボイスサーチを成功に導くにはどのような点に着眼すべきなのでしょうか。

テクニカルSEO

スピードとモバイルフレンドリーを重視することが必要です。Backlinkoによる10,000件のボイスサーチ結果の調査によると、ボイスサーチ結果のファーストバイト(ブラウザが受け取る最初の1Byte)までの時間は、平均的なウェブページの場合よりも大幅に短縮されることが分かっています。

Googleの「スピードアップデート(ページの表示速度が極端に遅い場合に順位を影響を与えるアルゴリズム)」が全ユーザーを対象に実施されている現在、モバイル検索やボイスサーチの戦略では、このスピードアップを最初に考慮する必要があります。

  • すべてのランディングページで構造化データを使用する
    デジタルアシスタントの大きな課題のひとつは、何兆ものページを調べて、ユーザーのクエリに答える要素を特定しなければならないことです。構造化データは、検索エンジンがコードをナビゲートしてその内容を理解するのに役立つデータ形式であり、これを使用することが重要です。
  • 新しいデータ形式を試す
    GoogleがSpeakable構造化データのサポートを開始したことにより、ウェブページ内で音声合成(TTS)による音声再生に最適なセクションを特定し、検索エンジンやその他のアプリケーションがGoogleアシスタント対応デバイスで読み上げるコンテンツを識別できるようになりました。これはまさに特定のブランドやイベントに関連するトピックやニュースを問い合わせる際に便利な機能です。現在このフォーマットの適用範囲は限定的ですが、デジタルアシスタントがすべてのランディングページから直接コンテンツを読み上げるようになる日に備えて新たなデータを積極的に試すのが良いでしょう。

コンテンツマーケティング

ボイスサーチを意識したコンテンツマーケティングが必要です。

  • 会話形式のコンテンツを作成する
    自然な対話に適しているボイスサーチを効果的に活用すべく、コンテンツ戦略にも会話形式を組み込む必要があります。業界毎のよくある疑問や悩みを特定し、わかりやすい返答方法を検討しましょう。
    ボイスサーチのクエリは、タイプ入力のクエリよりもはるかに多様であるため、コンテンツ内で個々のクエリをターゲットにしようとするのは困難です。検索エンジンが求めるのはユーザーの意図を満たすことであるため、ユーザーの状況に対応して迅速かつ効果的にタスクを達成できるようにフォーカスしましょう。
  • 一貫したブランドボイスを開発する
    近い将来、ボイスサーチに対してブランドが直接的にオーディエンスに語りかけるようになるでしょう。例えばコンテンツに埋め込まれたオーディオクリップや、検索エンジンがページのテキストを読み上げるという形式が考えられます。どんな音声で読み上げるべきか、自社ブランドにあったブランドボイスを開発することも重要になるでしょう。

また、Googleが提示している以下の評価項目をカバーすることも重要です。

  • 情報の満足度
    回答内容がユーザーの情報ニーズを満たしていることが必要です。
  • 回答の長さ
    音声による回答ではその長さがキーになります。情報量が多すぎず少なすぎず、役に立つ情報を簡潔にまとめることが重要です。
  • 定式化
    テキスト形式の場合は多少文法的に正しくない場合でも理解できますが、話し言葉の場合は内容を理解するのが困難になります。文法的に正しく読み上げることができるか、より注意しなければなりません。
  • 発声
    正しい発音と韻律は欠かせません。WaveNetやTacotron 2などの音声合成技術の向上により、人間のパフォーマンスとの差が急速に縮まってきています。

ローカルSEO

AmazonとYextの提携によってボイスサーチのオポチュニティが拡がっていますが、そのパフォーマンスはブランドが正確で一貫性のある位置情報を提供できるかどうかにかかっています。ローカルリスティングを管理し、ローカル検索のパフォーマンスを分析するためには、専門のプラットフォームを使用するのがおすすめです。これらの作業をサポートするSEOランキングツールやモバイルSEOツールは、ますます充実してきています。また、消費者が自分の意思で行動しやすいように、明確な行動喚起と詳細情報への誘導を追加することも重要です。

ボイスサーチを意識した製品・サービス設計

今後はWebサイト以外にもチャットボット、アプリ、ソーシャルメディアすべてがボイスサーチクエリの情報を顕在化するために使用され、大容量の音声クエリがアプリ内で追跡され保存されるようになります。今後の製品・サービス企画には、参考としてその音声クエリが使用されるようになるでしょう。音声クエリは新しいサービスを企画する際の貴重なリソースとなり、未回答のクエリーは「=顕在化した需要」としてアイデアに反映することが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。人間が本来持っている「話す能力」を活用するボイスサーチは、間違いなく人々の生活をより豊かにすることでしょう。現在はその効率性に注目が集まっていますが、今後はテクノロジーの発展に伴い、医療分野や安全保障など我々の生活の中でもより重要な分野に対してプレゼンスを発揮していくことでしょう。今の段階から、デジタルマーケティング戦略に音声を組み込むことを検討してみてはいかがでしょうか。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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