ソーシャルメディアマーケティングとカスタマーサービス

January 26, 2023

皆さんの会社ではどの部署がソーシャルメディアアカウントの管理をしていますか?ほとんどの場合、マーケティング部門とお答えになるかと思います。最近、様々な理由からソーシャルメディアをカスタマーサービスと共同管理する企業が増えていると聞きます。今日はその理由や、メリットなどをご紹介したいと思います。


マーケティング部門におけるソーシャルメディアの立ち位置

マーケティング部門がその効果の証明をするのに苦戦していることの一つがソーシャルメディアマーケティングです。2020年にDuke大学・Deloitte・American Marketing Associationが共同で行ったCMO Surveyでは、回答したマーケティング管理職の67.6%がソーシャルメディアマーケティングの効果を可視化できていないと答えました。この数字は回答者全体の平均値ですが、B2Bサービスを提供している会社に限ると74%、B2Bプロダクトを提供している会社では76.9%にも達します。それにも関わらず、ソーシャルメディアマーケティングの予算は年々増加しており、マーケティング全体予算の約13.3%が割り当てられていることが明らかになりました。どのマーケターもマーケティングチャネルとしてソーシャルメディアの重要性は認識しているものの、その効果の確証は持てていないまま予算を拡充しているのは大きなレッドフラグと言えるでしょう。


ではどうすればいいのでしょう。まずはソーシャルメディアのオーディエンスと私たちマーケターの認識をすり合わせることが大事です。私たちマーケターにとってソーシャルメディアはオーディエンスに直接情報を発信できる場です。マーケター目線で考えるとこのホワイトペーパーをTwitterでプロモーションしようとか、このイベントの登録をFacebook広告で増やそうとか、ソーシャルメディアからのコンバージョンを念頭におきます。一方、オーディエンスは情報を受け取る場所ではなく企業と会話する場所だと認識しているのです。

ソーシャルメディアは発信の場だけではなく、会話の場になっている 

ソーシャルメディアを「情報を発信する場」として認識していては今後オーディエンスとの意識の相違が出てきてしまうかもしれません。昨今は「ソーシャルメディアカスタマーサービス」という言葉があるほど、ソーシャルメディア上でただ発信するのではなく、直接顧客や見込み顧客とコミュニケーションをとり、適切な対応をすることが重要になってきています。

というのも、SproutSocial社のThe Sprout Social Indexレポートによると、企業側からの返信が必要とされるコメント・メッセージは3年間で146%も上がったというデータが出ています。しかし、実際にそれらのメッセージに返信できているのは平均約10%ほどで、返信率は落ちているそうです。ちなみに、同レポートによるとソーシャルメディアで企業のフォローを外す1番の理由として「悪いカスタマーサービス」が一位に挙げられています。


引用: The Sprout Social Index



さらに、Smartinsights社のレポートでは調査対象の企業の約80%がソーシャルメディアで良いカスタマーサービスを提供していると答えたものの、顧客のたった8パーセントしかそれに同意しなかったという結果も出ています。 このように、今日のソーシャルメディアは単にメッセージを発信するだけでなく、顧客と直接会話しタイムリーに対応するカスタマーサービスの様に運用する必要が高まっています。対応しなければいけないメッセージ数や対象者の数はB2C/B2Bで変わりますが、その本質は変わりません。


ソーシャルメディアをカスタマーサービスと共同管理するメリット

企業規模が大きかったり、B2C企業でソーシャルメディアを専任するリソースがある場合はマーケティング部門で管理していても良いでしょう。その担当者がタイムリーにオーディエンスとコミュニケーションを取れていれば全く問題ありません。しかしよく聞くケースがこれです。

    そんなにフォロワー数も多くないしソーシャルだけに人員はさけない→
    PR/広報とソーシャルメディアを兼任にしよう→
    PR/広報のワークロードが多くなりソーシャルは簡単な情報共有だけ


この状況だとソーシャルメディアを効果的に活用することは難しいでしょう。ソーシャルメディアで情報を発信しつつオーディエンスと会話をもちエンゲージメントを高めるとなると、カスタマーサービスの知見が大いに役立つ場面もたくさんあるでしょう。もちろん、ソーシャルメディアは大事なマーケティングチャネルであることは変わりませんから、ソーシャルメディア管理を全てカスタマーサービスに渡さずとも、共同で管理する仕組みを作ると効果的かもしれません。フォロワーからの質問にタイムリーに答えたり、クレームの対応、ソーシャルメディア上のブランドイメージを維持するにはカスタマーサービスの視点が欠かせません。

これら全てを考えると、冒頭のソーシャルメディアマーケティングの効果を可視化できない、というのも納得かもしれません。マーケティングチャネルとして有効的にソーシャルメディアを使うには、もう一度ソーシャルメディアで発信すべき内容、頻度、トーンを顧客目線に立って熟考することが大事かもしれません。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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