メールマーケティングにおけるシナリオの活用

September 4, 2023

高度なメールマーケティングは、さまざまなテクノロジーが関連してはじめて行うことのできる施策であり、MOpsが管理することの多いCRMやMA、メール配信ツール、アクセス解析ツールなどをフルに活用することで高い成果が見込めます。
国内でもMAの導入が一般的になり、メールマーケティングの高度化が進んでいます。その中でも、顧客行動や顧客データに基づいたシナリオベースでのメール配信を通じたパフォーマンスの向上を目指す企業が増えています。そういった企業では、まずは新規リードに対してステップメールを実施しているケースが多く見受けられますが、BtoBマーケティングにおける顧客競争が激しさを増している今日、必ずしもそれだけで顧客の反応を得られるわけではありません。この記事ではメールマーケティングで効果を発揮するためのシナリオと、それに付随したオファーについて考えていきます。

Eメールマーケティングのシナリオ例

近年のMAには条件分岐によるシナリオ設計を可能とする機能が搭載されるようになっています。特に、Salesforce Account Engagement(旧Pardot)やHubspot、その他の国内MAなどではこのシナリオベースのメールマーケティング機能が備わっています。条件分岐型のシナリオの優れているところは、一度に多数の人にメール配信することができ、そして顧客の行動に応じて送る内容を分けることができる点にあります。主に条件分岐型のシナリオを使ったシナリオを考えてみましょう。

イベント前後のコミュニケーション

BtoB企業でウェビナーの自動メールキャンペーンを運用しているとします。ウェビナーの招待メール、未登録者への招待メールの再送、視聴用URLを含むメール、最後に欠席した人へのメールを送信したいと思います。これをそれぞれ単独のメール配信機能を使って準備するのはとても大変な作業です。そんな時に条件分岐型のシナリオが役立つのです。

多くのMAツールのメールシナリオには、以下のような条件を設定することができます。

  • メールを開封した
  • メール内のリンクをクリックした
  • リードになんらかのタグ付けがされている
  • 特定のリードリストに含まれている

これらを条件に組み入れることで、分岐型のシナリオメールを送信することができます。MAツールによって機能が多少異なってきますが、重要なのは分岐の条件となる行動を正しくデータとして持っておくことです。
Salesforce Account Engagementを例にとると、行動ベースの条件は「トリガー」として、属性ベースの条件は「ルール」として条件分岐に使うことができますが、Webサイトのアクティビティがトリガーとしては使えなかったり、Salesforceのカスタム項目とAccount Engagementのカスタム項目の同期は手動で設定する必要があるため、必要な情報がAccount Engagementに連携されていなかったりします。これらを回避するためにSalesforceキャンペーン(Account Engagementには自動同期される)でメンバーを管理したり、特定のWebアクティビティをした人をリストに追加したりすることで正しいセグメントを作成することができたりします。

行動トリガーのメール

イベント前後のコミュニケーションでは主に属性情報をベースに配信対象を決める一方で、行動をトリガーにシナリオを開始するシナリオも考えられます。行動に応じたシナリオは、配信対象は限られるものの、多くの場合、反応を得られやすいです。1つめのシナリオでも書いていたような分岐条件をシナリオの開始条件にするようなイメージです。

  • リードをタグ付けした
  • リードリストに追加された
  • Webサイトのフォームを入力した
  • メール内のリンクをクリックした
  • 特定のWebページにアクセスした
  • 3rdパーティーツールからWebhookがコールされた

などがあります。これらのトリガーはMAツールごとに機能が異なるため、確認が必要です。BtoBマーケティングではマーケティングの手を離れ、営業が商談を進めることが多いため、営業と顧客のコミュニケーションの結果をトリガーにすることも忘れないようにしましょう。具体的には、商談の受注or失注や、インサイドセールスが見込み客と会話した結果、抱えている課題や興味のある商材が明らかになった、などはトリガーに使う重要な情報になります。

メール未開封者への再送

BtoBマーケティングでは多くの場合、見込み客へのアプローチを完璧に行いきれない状態でメールマーケティングを行わなければならないことが往々にして起こります。具体的には、コンテンツが足りない状況でシナリオを作成し、数か月にわたるコミュニケーションを行なわなければならない状況や、限られた数しかないキラーコンテンツをどうしても見てもらう必要がある状況などが考えられます。そういった際には未開封者へのメール再送シナリオが役立ちます。

件名を変え、異なる切り口から興味を持たせる工夫をする一方で、本文やオファーは同じものを送れば、メール担当者の工数を削減できます。また、再送まで数日間あけることで、一時的に忙しい見込み客が落ち着いたタイミングで再送メールを確認・開封し、望ましいアクションにつながる可能性があります。

反応のあるリードに対して配信頻度を高める

Web回遊やキーコンテンツの閲覧などをしているリードは比較的検討度の高い見込み客であり、おそらく会社やサービスのことを認知し興味を持っているといえます。そういった人々を通常のリードと区別しメールの配信頻度を高めても、メールの配信停止にはつながりづらいと考えられます。

これを実現する方法は2つあります。1つはシナリオを別に設定し、メールへの反応を検知したらシナリオを停止して別のシナリオに移行させること、もう1つは分岐シナリオ内で次のメール配信頻度を短くすることです。シナリオの複雑さによってどちらが良いか、判断しましょう(1つめの方法の方が複雑なシナリオに対応しやすいですが、シナリオを複数作る手間が少しかかります)。

一方でBtoBビジネスの場合、この興味や関心が個人ベースではなく企業ベースのことがあります。これに対応するためには、例えばSalesforceを使用している場合には、「取引先」単位でのアプローチが有効に働くことがあります。これも別のオートメーションフローを用いてホットリード取引先に含まれるリードを一気にリストやキャンペーンで管理できると実現が可能とになるでしょう。そうすれば仮にアポイントを取得し打ち合わせを行う際にも、担当者以外の人も理解を深めてくれている可能性があり、よりスムーズに商談を進められることにもつながるでしょう。

再エンゲージメントメール

しばらく反応のなかった見込み客が再度興味を持つことは決して珍しいことではありません。再エンゲージメントメールを実行すれば、しばらく関わりのなかった見込み客との接点を取り戻し、配信リストを維持することにもつながります。

このメールが重要なのには、もう1つMOpsの観点からみた理由があります。反応のないメールは所有者がいなくなったことで、メールサーバーからスパムトラップ(無作為に送りつける送信元をスパムとして扱い、サーバー全体で迷惑メール扱いにするような動きをする)として再利用される可能性があるのです。そのため、半年や1年間エンゲージメントがないリードは配信リストから除外することが望ましいとされています。

とはいえ、エンゲージメントがないのは受信した人がただ興味がないからという可能性もあります。そのため、再エンゲージメントキャンペーンで通常のメールとはテイストが異なるメールを送り、再度興味を取り戻させる必要があるのです。再エンゲージメントメールには、次のようなものがあります。

  • 割引やプロモーションなどのオファーを提供する
  • 短く、ポイントが簡潔に記載されている
  • 受信者へのアクションが端的に明記されている

再エンゲージメントのコストはリードの新規獲得よりも低く済むため、試してみる価値はあるでしょう。

メールのシナリオに取り入れるオファー

メール内で行動を促すCTAとなるコンテンツのことを「オファー」と呼びます。オファーは多くの場合、セミナーの登録ページやダウンロードコンテンツ、問い合わせページ、Webサイトの記事だったりすることが多いかと思います。ここではあまり活用されていないが効果を発揮する可能性があるオファーをいくつか紹介します。

無料コンサルティング


検討度合いの高い人に特化したアプローチとして、単なる打ち合わせの依頼ではなく、無料の「コンサルティング」や「ワークショップ」などの提案を組み入れてみましょう。
担当者の準備も必要になるためたくさん実施することは難しいですが、無料コンサルティングを通じて以下のような効果が見込めるでしょう。

  • 見込み客のことをより深く知る
  • 自社の信頼度を高める
  • 成功事例を伝え具体的イメージを持たせる
  • 提案できる商材の幅を広げる

特に高単価商材では無料コンサルティングによる費用対効果が合いやすく、取り入れやすいのではないでしょうか。

教育的な内容のウェビナー


コロナ禍以降、多くの企業がウェビナーに取り組むようになりましたが、その内容は企業によってさまざまです。商品紹介ウェビナーのようなものが中心なところもあれば、ゲスト登壇者を呼んで注目を集めるところもあります。既存リードへのコミュニケーションという観点では、ウェビナーをカスタマージャーニーにあわせて用意しておくことが必要ですが、検討初期段階の方に対する教育的な内容のウェビナーを定期開催することで、メールマーケティングに組み込みやすくなります。

人それぞれ検討状況は変わるため、評判の良いものは定期開催しても集客が見込めます。これによって、そもそもの市場や商品カテゴリーについて知ってもらい、自社商品・サービスの前提知識や市場の最新情報など、学習意欲に沿った知識を提供できます。

メール限定のオファー

BtoC商材ではメール会員限定オファーをよく見かけますが、BtoBビジネスにおいてもこの手法で効果を発揮する可能性があります。誰でも見れるコンテンツはありがたみがなくなってしまいますが、特定の人に絞り込んだメールであれば、特別感を受信者に感じてもらうことができ、行動を促しやすくなります。また、営業やインサイドセールスと連携してフォローアップすれば、より特別感の高い体験を提供できることとなり、関係を深めやすくなるでしょう。

まとめ

MOpsの担当者が実務的にメールマーケティングに携わることは少ないかもしれませんが、間接的に関わる上でもメールマーケティングの知識があれば、担当者から重宝されるのは間違いありません。特に、MOpsチームはMAを導入し管理することも多いと思いますので、その特徴的な機能であるシナリオメール機能を使いこなし、見込み客からの高い反応が得られれば、さらなるテクノロジーの活用やオペレーションへの期待値が高まることにもつながるでしょう。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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