従業員のリスキリング方法

February 12, 2023

世界規模で進展する「リスキリング」

2020年頃から、テクノロジーによる自動化の進展が始まりました。そんな中、パンデミックによって名だたる企業の業績悪化やビジネスの大幅な方向転換が起こり、世界経済と雇用が大きく不安定化しました。大規模解雇の流れが2023年現在もなお世界中で続く中、確かなスキルを身につけていないと生き残っていけないという実感が人々に生まれているのは間違いないでしょう。

世界経済フォーラム(WEF)が2020年1月に発足したプラットフォームReskilling Revolutionをご存じでしょうか。Reskilling Revolutionとは、人工知能(AI)などの技術により自動化が進む中、世界中の従業員が将来のキャリアに必要なスキルを身につけられるよう準備するためのプログラムです。アデコグループ、フランス政府、LinkedIn、PwC、Salesforce、UNICEFなど世界各国の企業や組織が創設メンバーとして始まったこのイニシアチブですが、今では16カ国32人の大臣が参加するネットワークを通じて350以上の団体からなるコミュニティーを形成しています。さらにはNGO、教育関係者、慈善団体なども参加して、途上国と経済国のスキルや教育格差の解消にも取り組んでいます。

競争力と専門性を維持するために、世界中の企業は従業員のスキルを迅速に向上させる必要があります。新しいテクノロジーに適応できる従業員を育てることで、企業はより生産性を高めることができるでしょう。

従業員側も先進的な企業で働き、デジタルテクノロジーのトレーニングを受け、キャリアアップを実現することを望んでいます。そのため、自社に今必要なスキルを見極めるだけではなく、自分自身とそのスキル・知識においてどこにギャップがあるのかを確認することが急務となっています。

欧米では従業員のリスキリングに大変力を入れて取り組んでおり、顕著な例として米国の情報通信大手AT&Tの取り組みが挙げられます。同社はAT&T Universityというプログラムを通じて個人に合わせたトレーニング、メンタリング、キャリア開発プログラムを提供しています。従業員のトレーニングや専門スキル開発プログラムに1億5800万ドルを投資し、2021年には1500万時間(従業員1人当たり43時間)のトレーニングを提供した実績があります。これらの努力により2021年には21万人の従業員に達し、継続的な学習とスキルアップの文化を創り出すことに成功しています。

一方で日本では欧米に比べてOJT以外の人材育成予算は極めて低く、今変革が叫ばれています。急激に変わりゆくデジタル時代を生き抜くためには、一体どのようにして会社と人材を育てていけば良いのでしょうか?

自社に必要な高度専門スキルを特定する

単なるスキルアップのトレーニングではなく、専門的な資格やスキルを取得する機会を従業員に提供することが重要です。

テクノロジーが高度化し複雑になっていくこれから、専門知識を身につけなければ組織は生き残っていけません。専門スキルを持った人材こそ企業や組織にとって重要な存在になります。

マーケティングの領域では、マーケティングオートメーション運用スキルやBIツールなどを用いたデータ分析スキルなど高度な専門スキルはもちろん、実行と戦略を結びつける戦術設計のスキルが求められています。

リスキリングを展開する

このように企業が新しいテクノロジーに投資したり、ビジネスを方向転換したりすると、それに伴い新しいスキルを持った従業員を探す必要が出てくることがあります。

しかし、必要になったタイミングで優秀な人材を採用することは簡単ではありません。既に組織で働いている技術的な知識を持った人材をリスキリングすることで新たに必要となったスキルをつけてもらうことが効果的です。

というのも、高度なスキルをもった人材は大抵枯渇しているため採用は難航することが見込まれますし、採用できたとしてもトレーニングなどを考えるととても時間がかかるのです。既に会社を理解し、一定の知識を備えている従業員のリスキリングに投資する方がはるかに効率的で、デジタル系人材確保における競争を避けたり、組織へのロイヤリティ維持にかける労力を軽減するなど、明確なベネフィットがあります。

01GROWTHでは、戦略及び戦術設計に強いマーケターを育成するプログラムを提供しています。このプログラムは全24回で構成されており、企業の中核人材となることを目的としたグローバル標準のB2Bマーケティングの戦略・戦術フレームワークを学んでいただけます。ぜひご参考にしてください。

スキルをアップデートする機会を提供する

せっかくリスキリングを実行しても一回限りでは意味がありません。人材リテンションを高めるためにも継続的に知識をアップデートできる機会を与えましょう。

LinkedInの2022 Workplace Learningレポートによると、現在の仕事で自分のスキルが十分に活かされていないと感じている従業員は、自分のスキルが十分に活かされていると感じている従業員よりも10倍以上転職する可能性が高いそうです。このことからも、従業員を大切に考え、彼らのスキルを活かす努力をすることが、人材確保にいかに重要であるかわかります。

同レポートによると、2022年のLearning & Development(L&D)プログラムの重点分野のトップ3は、リーダーシップとデベロップメント、アップスキリングまたはリスキリング、デジタルアップスキリングまたはデジタルトランスフォーメーションであることが分かっています。

定期的にチームメンバーのスキルを確認し、彼らのニーズと会社のニーズを繋げることが重要です。

ピアサポートプログラムを立ち上げる

同僚同士でスキルを教え合えるようなピアサポートプログラムを通じて、従業員のスキルを最大限に活用することを検討しましょう。ピアサポートプログラムは、従業員同士のスキルエクスチェンジだけではなく、トレーニングの内容をビジネスに深く関連付けることができる点です。

新しいキャリアパスを提供する

オートメーションやAIなどのテクノロジーの変化や進歩によって、これから組織内のキャリアパスの一部が無くなったり、反対に新しいキャリアパスが切り開かれて行くことでしょう。

早い段階からそのようなキャリアパスを提供することに着目して投資することで、従業員のリテンションに繋がります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。従業員のスキルアップをサポートして、リテンション・ロイヤリティを高めることがビジネス成長の近道であることは明らかです。昨今のテクノロジー主導型の世界では、企業が成熟したデジタル組織であることが必要不可欠であり、そのためには従業員各々がグローバル標準の戦術フレームワークを身につけている状態が理想的です。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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