OTTとCTV
March 7, 2023
世界の動画ストリーミングマーケット
世界の動画ストリーミングマーケットは、次の10年間で25%成長し、2033年末までに7,500億米ドルの収益を獲得すると予測されています。人口約1.2億の日本においても、約2000万人が何らかの動画ストリーミングサービスを利用しており、その中で最も有料会員数が多いAmazon Prime Videoでその数は500万人以上と言われています。以下のチャートを見ると、各国で様々に異なる動画ストリーミングプラットフォームが使われていることがわかります。
コネクテッドTV(CTV)とは
コネクテッドTV(Connected TV:以下CTV)とは、インターネットに接続することで動画コンテンツのストリーミングをサポートするTV型のデバイスのことです。CTVにはXbox、PlayStation、Roku、Amazon Fire TV、Apple TVなどの種類がありますが、日本ではインターネットへの接続とメディアプラットフォームとしての役割を併せ持つスマートTVの利用が一般的です。
オーバーザトップ(OTT)とは
オーバー・ザ・トップ(Over The Top:以下OTT)とは、インターネット回線から直接配信されるTV・動画コンテンツのことです。OTT視聴のために従来のケーブルや衛星放送のプロバイダーに加入する必要はなく、タブレット、電話、デスクトップ、TVなど、さまざまなデバイスでこのコンテンツを視聴することができます。映像はストリーミングやビデオ・オン・デマンド(VOD)形式で配信されます。Netflix、Hulu、Amazon PrimeなどがOTTサービスにあたります。また現在ではマスメディアやネットワークも独自のOTTサービスを開始しています。
つまり、ユーザーはOTTなどのコンテンツをCTV・スマートTVといったTV画面を通じて閲覧しているということです。CTVやOTTの台頭により、従来のケーブルや衛星放送の契約を解除し、これらのストリーミングや動画フォーマットのみの利用に切り替える「コードカット」と呼ばれる現象が起きています。ケーブルTVが最も普及するアメリカでは2022年時点で490万人がケーブルTV・サテライトTVの契約を終了したとされています。
CTV広告
動画広告の変遷
ソーシャルメディアやストリーミングサービスなど、様々なプラットフォームの台頭により動画マーケティングを取り巻くマーケットは拡大し続けています。72%のカスタマーが製品やサービスについて理解する際には動画フォーマットが好ましいと回答していることからも、昨今の消費者とのコミュニケーション方法として動画が非常に適していることが分かります。
デジタル動画広告への投資が指数関数的に増加しており、2023年末には消費者のインターネットトラフィックの84%がオンライン動画からもたらされるとも言われています。その一方で、従来のTV広告への支出は年々減少しています。
2007年以降、従来の携帯電話よりも大きなスクリーンのスマホの普及が動画広告マーケットを一気に盛り上げ、昨今では2020年TikTokの台頭とInstagram Reelのローンチによりショート動画マーケットが急成長しました。今やTikTokユーザーは世界で10億人を超え、一大マーケットとなっています。TikTokは10代のユーザーが多いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、日本ユーザーの平均年齢は34歳、平均世帯年収は646万円。コンテンツ消費への支出も他ソーシャルメディアと比べて高いといわれています。
2023年現在、CTV広告に注目が集まっています。tvScientificの調査によると、80%以上の消費者が複数のストリーミングサービスに加入しています。またコネクテッドTV広告における動画広告の視聴完了率は95%と高く、CTV広告は今後の動画キャンペーンに欠かせない存在と言えるでしょう。
CTV広告とは
CTV広告とは、接続されたTVデバイス上でストリーミングサービスコンテンツ内に表示されるデジタル広告の一つです。放映中のコンテンツの横に表示されたり、従来のTVCMのようにコンテンツ内に配信されます。多くのストリーミングサービスでは広告を許容する代わりに無料で番組を視聴できるというオプションが用意されています。
CTV広告の利点
ユーザーの注目度が高いプレースメント
CTV広告は、他のデジタル広告とほぼ同じように機能しますが、流し見されがちなスマートフォン画面で表示されるタイプの広告とは対照的に、消費者が注意を払っているTVの大画面で広告を見せることができるという点が大きなアドバンテージです。CTVにはユーザーのアクションを促すQRコードや動画アクションキャンペーン、ユーザーの注意を引くポーズスクリーン、直接購買に繋げるショッパブルコンテンツなどがありますが、いずれもTVという大きなデバイスを通じて、ユーザーの注目度が高い状況で情報を届けることができるのです。
加えてある研究によるとTVシリーズ、スポーツ、ニュースなど通常CTVの大型デバイスでストリーミングされるコンテンツに対する広告への許容度は、モバイルで閲覧されるゲーム、Podcast、短編動画に表示される広告よりも高いことが分かっていますので、広告によるブランド毀損の懸念も少なくなることが予想されます。
オーディエンスターゲティング
CTV広告では、OTTやその他動画配信サービスが保有するファーストパーティデータを用いたオーディエンスターゲティングを利用することができます。属性情報や興味関心情報を設定することで、その他のデジタル広告同様「人」に対してターゲティングをすることが可能です。ただし一般的には一つのデバイスを複数名で使用していると考えられるため、配信する番組や時間帯で正しいオーディエンスに配信されるように工夫する必要があります。
プログラマティックバイイング
その他のデジタル広告同様、プログラマティックバイイングが利用できます。オープンオークションのRTB、PMPを適宜使い分けて効率よく配信することが可能です。CTV広告の種類によっては在庫と価格固定のダイレクトバイイングも可能です。
リーチの拡大
OTTやCTVの広告を使えば、従来のリニアTV(ケーブル、衛星、アンテナなど)を閲覧しないオーディエンスに対してもリーチを広げることができます。
OTTとCTVの今後
OTT流通モデルの多様化
Netflix、Disney Plus、Huluなどの動画ストリーミングサービス大手は現在、広告付きの低料金プランを提供しています。世界的な経済的打撃による生活費の上昇に対応し、解約を抑えるための取り組みです。デロイト・グローバルによると、2023年末までに先進国の消費者の3分の2が、少なくとも1つのAVOD(Advertising Video On Demand)月額サービスを利用するようになると予測しています。広告への許容度が変わらずそのまま低料金で利用し続けるユーザーが多いのか、あるいは優れたエクスペリエンスを求めて通常プランに繰り上げるケースが多くなるのか注目が集まっています。
OTTの集約
アクセンチュアの2023年最新レポートによると、86%の消費者が、すべてのエンターテインメントサービスを一つのアプリで使用したいと回答しており、41%がそのためならばお金を追加で支払うことを検討すると回答しています。既にAmazon Prime Videoは、会員に対してParamount+、AMC+、STACK TV、BritBox、Hollywood Suite、Shudder、Smithsonian Channel、PBS Masterpieceなどの動画ストリーミングサービスに安く短期で契約できるサービスを提供しています。YouTubeも「Primetime Channels」という新サービスを開始し、YouTubeプラットフォーム上で34の異なるストリーミングサービスのコンテンツにアクセスすることができるようになっています。今後、Amazon PrimeやYouTubeのように、複数のストリーミングサービスからコンテンツを集め、一つのプラットフォームで閲覧できるタイプのOTTが増えることが予想されます。
ファーストパーティを強みとするCTV広告の台頭
サードパーティクッキーを必要とせずファーストパーティデータでターゲティングが可能なCTV広告は従来のTV広告の代替となるだけでなく、その他のサードパーティクッキーデータを必要とするデジタル広告にも取って代わると予想されています。
同時に、CTV広告を提供していないパブリッシャーやサプライヤーは、それに変わる動画広告サービスで供給量を伸ばそうと新たなフォーマットまたは改良版のフォーマットをローンチすると考えられます。アウトストリーム、ハイインパクトの動画ユニットは最近人気を取り戻しつつあり、特にモバイル中心の動画広告サービスの場合、縦型動画のバリエーションにフォーカスしています。CTV広告のライバルとなり得る動画フォーマットの登場に注目が集まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。CTVやスマートTVなどのデバイスやOTTなどの配信サービスだけでなく、今後はコンテンツ所有者の動向にも目が離せません。ライセンス収入を最大化するパートナリングが活発に行われたり、それに伴うソフトウェアソリューションもローンチされ始めています。
また、コンテンツサプライヤー及びOTTに対してデータドリブンなインサイトを提供することで収益を最大化するRevediaといったAIツールの台頭も顕著です。
しかしながら、動画を取り巻く新たなマーケットCTV・OTTにおいて、ユーザーファーストと収益を両立させるベストプラクティスが確立されるにはもう少し時間がかかりそうです。まずは自社のマーケティングミックスに新たな動画ソリューションとしてOTT・CTV広告を取り入れてみてはいかがでしょうか。