MOPMでマーケティングチームの効率性を高める方法

November 30, 2023

*MOPM=Marketing Operations Project Management(マーケティングオペレーションによるプロジェクトマネジメント)

MOpsが担う代表的な業務として、マーケティングツールまわりの開発と実装、システム管理、そして運用ルールとマニュアルの作成および管理などが挙げられます。しかし、私が個人的にMOpsの中でとても重要なファンクションだと考えているのがMOPM、マーケティングオペレーションプロジェクトマネジメントです。興味深いデータがあります。MadkuduによるデータではHubSpot、Adobe Marketo Engage、Salesforce Account Engagement(旧Pardot)などのマーケティングオートメーションツールを使用している550人以上のマーケターの90%が、プロジェクト管理ツールとしてスプレッドシートを使用しているそうです。MOpsとしてマーケティングチームの効率を真に向上させるためには、より良いプロジェクト管理方法を取り入れる必要があるのは明らかです。この記事を通して、マーケティングチームのプロジェクトマネジメントのオーナーを誰にするのか、成果を測定するのに必要なツールは何かなどを一緒に考えていきましょう。

マーケティングチームのプロジェクトマネジメントを担うべき人物は?

弊社ではMOpsの代表的な業務内容を5つに分類しています。

  1. マーケティングテクノロジーの要件定義から導入
  2. プロセスの策定、ベストプラクティスの集約
  3. プロジェクト・キャンペーンマネジメント
  4. データマネジメント及び分析
  5. チームのテクノロジー教育

上記の業務内容的にも、MOpsがプロジェクトマネジメントをリードするケースが理想的であるものの、まだMOpsの役割が確立されていないマーケティングチームも多くあると思います。マーケティングチームのプロジェクトマネジメントを担当する方に求められることは、自分自身が主導してマーケティング業務に取り組んだ経験や、管理が必要とされるレベルの業務が求められるチームに所属した経験です。複雑なキャンペーンなどをうつマーケティング部門におけるプロジェクトマネジメントにおいて、これらの経験なしにはタスクの優先順位付けやチェックリストの作成、ボトルネックの解消などにどう取り組めばいいかがわからなかったり、業務量を適切にコントロールするためのリソース計画に莫大な時間がかかってしまったり、そもそもどの業務プロセスで改善が必要なのかをうまく把握できなかったりと、は様々です。マーケティングの実務経験がある、もしくは不明確な状況でも戦略的な判断ができる能力がないと、プロジェクトの開始から完了まで全体を俯瞰して効果的に計画し、特定のタスクにどれくらいの時間がかかるかを把握し、業務を適切に進めるために必要なフィードバックを行うことができないのです。

マーケティングのプロジェクトマネジメントにおいては過去の実務経験を考慮すること、そしてタスクを完了させるために必要なことを十二分に理解していることが重要です。ボトルネックの解消、非効率な業務の改善、マーケティングチームの高いパフォーマンスの発揮、タスクの優先順位づけによるダウンタイムの低減、プロセスの継続的なアップデートなどは、マーケティングチームのプロジェクトマネージャーに必要なコアスキルです。   

データドリブンなチェンジマネジメントによってプロジェクトマネジメントを成功させる

MOpsはシステム設計やツール導入、そしてデータマネジメントも心得ているため、プロジェクトマネジメントに適任であることに間違いありません。しかしMOpsやRevOpsチームは様々な部門から絶えず要求を受けるポジションにいるため、彼ら自体の生産性が著しく低下する危険性もあります。これを防ぐにはデータをインサイトに変換してコミュニケーションをとることが重要です。とはいえ、データがあってもMOpsからの提言や要望が聞き入れられないこともあるでしょう。MOpsがプロジェクトマネジメントをスムーズに行うには、業務プロセスや優先順位などを変更する権限が与えられること、そしてマーケティングチーム全体でそれをしっかり理解することが重要です。

マーケティングチームがプロジェクトマネジメントツールを活用し成果を高めるための5つのカギ

プロジェクトマネジメントの手法を決定する

まずは組織全体のプロジェクトマネジメント手法を決定しましょう。手法を明確に指示されない限り、担当者は自分がやりやすい方法でタスク管理してしまいます。チーム内で摩擦やフラストレーションを引き起こす可能性があるため、プロジェクトマネジメントツールを選ぶ際も、手法にマッチしたものか必ず確認しましょう。手法とツールが決まったら、チームのニーズに合わせてプロジェクトマネジメントツールをカスタマイズしていきます。その上で効率的に活用し、うまくプロジェクトを進めるために必要なトレーニングを提供しましょう。手法としてはスクラムやアジャイルをベースにしたものが一般的に採用されていますが、複雑な業務内容を抱えるマーケティングチームにはカスタマイズを追加する必要があるでしょう。

標準化を優先させる

プロジェクトマネジメントツールの運用標準化と適切なデータ管理を行わないと、蓄積されるデータは実用的でなく、チームや会社全体の活用促進に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、ツールを使ってタスクを管理する人全員が決められた方法で操作する必要があります。早い段階で運用ルールが重要だということを認識できていないと、失敗してしまうことになります。プロジェクトマネジメントツールへの入力も、CRMなどと同じように標準化し、そこからデータやインサイトを引き出せるようにしなければなりません。プロジェクトマネジメントツールを利用する際にチームが行うべき標準化の例を以下に挙げました。

  1. 命名規則:検索性を高めるため、キャンペーンやファイル名などのルールを決める
  2. タスク作成:タスク入力項目やルール
  3. 予測工数の見積もり:過去の類似タスクのデータにもとづいて所要時間を推定できるように入力

組織的にプロジェクトマネジメントツールを運用する

プロジェクトマネジメントツールのアカウントをチーム全員に発行し、タスクを作成・管理させるのはあまりいい方法ではありません。データの完全性を保つには、適切なトレーニングを受け、明確な役割のあるツールのオーナーや、タスク管理を担う担当者、など組織的に管理することが効果的です。また、プロジェクトマネジメントにおけるメンバーの役割は大きく3つに分類できます。

  1. タスク担当者
    マーケティングチームメンバー全員がタスク担当者になりえます。担当者は各タスクが割り当てられ、タスクを完了させます。
  2. タスクマネージャー
    タスクマネージャーは、タスクの作成・管理を行い、後述するステークホルダーが意思決定できるようにレポートやデータを管理します。ある程度トレーニングを受け、標準化された運用方法を理解している必要があります。
  3. ステークホルダー
    ステークホルダーはあるプロジェクトが予算を追加しないと目標が達成できないと判明した場合に、人事部門やCMOに依頼し人員追加を承認してもらえるようにする、といったように意思決定をする役割を担います。この意思決定に必要なデータやインサイトを提供するのがタスクマネージャーです。

社内SLAを導入しマイクロマネジメントから脱却する

適切なプロジェクトマネジメントツールとプロセスを導入すれば、何がボトルネックになっているのか、誰が成果を上げていないのかが一目瞭然になり、その問題に直接対処できるため不必要なマイクロマネジメントを行わずに軌道修正することができます。適切なSLAを設定し、継続的にレポートを作成することで、プロジェクトが順調に進んでいるのか、そうでないのかを明確に把握することができます。また、タスク担当者はプロジェクトマネジメントツールでリアルタイムの進捗データを見ることで修正や変更が必要なポイントを把握することができます。

マーケティングプロジェクトマネジメントツール 

ここまで書いてきたような内容を管理するにはスプレッドシートでは現実的ではありません。MOpsはマーケティング部門の効率を高め、よりデータドリブンなマーケティングチームを運営するために適切なツールが必要です。自社に最適なツールを導入して複雑なマーケティングチームのプロジェクトマネジメントをすることが重要ですね。

マーケティングプロジェクトマネジメントツールとして代表的に用いられているツールには以下が挙げられます。

  • プロジェクトマネジメント全般:Jira、Asana、Clickupなど
  • タイムトラッキング:Everhour
  • ドキュメンテーション:Guru
  • プロセスマッピング:Lucidchart 

まとめ:マーケティングチームのプロジェクトマネジメントは誰が行うべきか?

プロジェクトマネジメントの経験をもつMOps担当者は少なく、同じようにマーケティング業務の経験をもつプロジェクトマネージャーもなかなかいません。それではマーケティングチームのプロジェクトマネジメントを行うべきは誰なのでしょうか?プロジェクトマネジメントは、単純に担当業務に追加できるようなものではありません。MOps担当者にプロジェクトマネジメントの役割を求めるのであれば、それを果たすために必要な知識を得るための適切なサポートを行い、その働きを尊重しなければなりません。

ある程度規模の大きいマーケティングチーム、MOpsチームがある場合はマーケティングオペレーションプロジェクトマネージャーという専門職を組織内に設置することも選択肢としてはあるのではないでしょうか。まだMOpsの機能を持たないマーケティングチームでは、まずはマーケティングオペレーションプロジェクトマネージャーポジションからMOpsチームの構築に取り掛かるのをお勧めします。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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