SoV(シェアオブボイス)とは?概要とその測り方
May 29, 2023
SoV(シェアオブボイス)とは?概要とその測り方
一昔前までマーケティングチームの大きな課題は適切なデータの収集でしたが、マーケティングチャネルの多様化やデジタル化が進んだ今、その悩みは様々なチャネルで行う数十・百のキャンペーン、そして数千・万のデータポイントをどのように分析するか、ということに変わりました。つまり、見れる数字は山ほどあるもののどれを見ればいいかわからない、という状態です。山ほどあるKPIのトラッキングは毎日/毎週欠かさないものの、その数字の上下を気にするばかりで自社のマーケットにおけるポジションが理解できていないケースも多くあると思います。
KPIに迷われている方々には、一歩下がって自分の立ち位置や目指すべき場所を再認識するために、よりシンプルな指標で明確に成果を把握することも大事なのではないでしょうか。そこでこの記事では、マーケティングの基本に立ち返り、主に認知に関して古くから用いられてきた指標、SoVとその測定方法、そしてどのように向上させていくかを紹介します。
マーケティングでよく耳にするSoVとは
Share of Voice (シェアオブボイス)とは、競合他社と比較して自社が市場の露出をどれくらい確保できているか、という指標です。
元々はテレビCMやラジオCMなど、広告文脈での競合との出稿量を比較するために使われ、オンラインにおいてもリスティング広告予算比など、とてもシンプルなものさしで測定されていましたが、 デジタルマーケティングチャネルが成長するにつれて定義も変わり、リスティング広告はもちろんSEO、ソーシャルメディア、PRなど様々なマーケティング活動全体を通したSoVの計測方法に変わりました。
SoVの概念が幅広くなった今日、自社が業界の中でリーダーと認識されているか、関連性の高いトピックやキーワードで自社のサイトがSERPに出るか、ソーシャルメディア上でどれくらいメンションを得ているかなど、各チャネルのSoVをトラッキングすることが重要です。SoVを測定するには、大前提として自社の競合他社や彼らと比べた時のバリュープロポジションなどを分かっていなければ結果を正確に理解できません。
競合調査についてさらに知りたい方は「デジタル時代における競合分析」や「競合のコンテンツマーケティング分析」をご参照ください。
SoVの計算方法
SoV=自社のブランドメトリック÷マーケット全体のブランドメトリック
基本的にこの計算式はどのチャネルでも用いられていますが、使用するチャネルすべてのSoVで手動で計算することは大きな負担になるでしょう。最近は各チャネルのツールがSoVを計測できる機能を持っている場合もあります。まずは現在お使いのツールを確認してみるといいかもしれません。
SoVを高めるメリット
SoVで明らかになるのはただの露出量の比較だと思われるかもしれませんが、露出した内容が伴ってさえいれば、競合と比較して露出が増えるのはとても意味のあることです。ここではSoVを高めることによる2つのメリットを紹介します。
ブランド認知の向上
露出が増えれば、それに伴ってリーチできる顧客が増え、認知の向上につながります。その後の検索や検討のフェーズに移る母数が増えることを考えれば、SoVを高め、認知が増えることはマーケティング活動において大きなメリットとなります。
第一想起による購買への貢献
また、露出が確保できていれば、それだけ見込み客に対してブランドへの好意度を高められるチャンスが増えるということでもあります。WACUL社の調査では、「BtoBでも第一想起した商品を導入する確率は55.3%」という結果が出ており、競合と比較して高いSoVを維持できれば、それだけ購買に至る可能性が高くなると言えます。
広告・マーケティングにおけるSoVの種類
デジタルマーケティングが全盛になり、競合と比較する領域は広くなりました。SoVは露出の全体量で比較できることが望ましいですが、現実的にはマーケティングチャネルごとに比較していき、それらの足し上げで全体的な競合比較に近づいていきます。
ここでは、SoVが測定されることが多いチャネルの種類について紹介します。
メディアSoV
テレビやラジオをはじめとしたマスメディアは未だに多くの人の目に触れる媒体ですし、今日は紙媒体だけでなくオンラインメディアも増えてきました。メディアは短時間で多くの人に触れることを特徴とするため、SoVを正確に測定し、競合他社との比較を行い、適切な露出量を確保できるように計画を立てることが一般的です。
広告によるSoV
本来のSoVの概念は、マスメディア広告の露出量から生まれました。テレビではGRPをベースに競合との露出量を比較することが多いです。それ以外にもラジオCMや交通広告などでもSoVを算出できるデータが揃っていることが多いです。
広報施策によるSoV
近年は広告だけでなく、能動的な広報戦略によってメディアに取り上げられる企業・ブランドが増えています。メディアシェアは主にPRチームがトラッキングする指標ですが、ニュースサイト等で掲載される自社のフィーチャー、メンションなどを測定します。どんなメディアがどんな文脈で自社を表現しているのか、その回数などをPRリスニングツールを用いて把握します。さらに競合他社のメディア露出を特定し、その質や数を比較することもできます。これを実行することで必要なメディアカバレッジの種類やアウトリーチするべきメディアの特定にも役立ちます。代表的なツールとしてMeltwaterなどが挙げられます。
検索エンジンでのSoV
インターネット利用者が増えるに伴い、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの利用が増えてきました。近年の消費者はSNSを中心に回遊すると言われていますが、ニーズ顕在層の多くは検索エンジンでの検索を行うことが明らかになっており、BtoBビジネスではその傾向がより顕著です。
実際に、広告出稿額でみても、電通の2022年の調査では検索連動型広告の広告費用は前年比122.4%と高い伸びを維持していることがわかります。
リスティング広告でのSoV
リスティング広告でのSoVは広告を最大限表示できたであろう回数と実際のインプレッション回数を比較することで広告の視認性を測定します。 Google広告ではこれをインプレッションシェアとしてキャンペーンとキーワードの設定を基に算出しています。
このデータをもとに、投資するべき、もしくは除外するべきキーワードや予算配分などを見直すことができます。また、このデータをもとにコンテンツを拡充すべきエリアの特定もすることができるでしょう。
SEO SoV
オーガニック検索におけるシェアオブボイスの計算は少し複雑ですが、これまで何回もご紹介してきたSEMRushやAhrefsなどのSEOツールを用いれば簡単です。SEMRushではPosition Trackingという機能を使えば下の図のように一目でSoVや可視性、平均検索順位などのデータが確認できます。上位競合他社と自社の平均検索順位とキーワードの数を軸にしたグラフでだしてくれるため、自社の立ち位置もかんたんに把握することができます。
SNSでのSoV
SNSでのSoVは、プラットフォームごとに取得できる値は少しづつ異なりますが、基本的にはインプレッション数や再生回数などのリーチに関する指標と、いいねや高評価、シェア、保存などのエンゲージメントに関する指標の2つを取得できます。そのため、これらの値を競合と比較します。
一方、SNS広告の出稿量は測定することが難しく、基本的にはオーガニックな投稿、つまり自社アカウントからの投稿とUGC、場合によってはインフルエンサーマーケティングなどの投稿で比較します。
アカウント運用・UGCによるSoV
アカウント運用・UGCによるソーシャルメディアSoVはオーディエンスとのエンゲージメントを基に算出します。各ソーシャルメディアプラットフォームにおけるオーディエンスの投稿内容やエンゲージメントを分析し適切なSoVを測定するには、自社もしくは製品・サービスの言及を識別して計測するソーシャルメディア分析・リスニングツールが必要になります。
測定値を競合他社と比較すれば自社のソーシャルメディア活動の改善点なども見えてくるかもしれません。代表的なツールとしてSprout SocialやHootsuiteなどが挙げられます。
SoVの改善方法
SoVを改善するにはまず各チャネルの明確な目標を持つことが大切です。たとえばPPC・SEO Sovの改善ではどんなキーワードのランクを上げたいか、SNS・メディアSoVではどんなトピックのフィーチャー・メンションを伸ばしたいか、といったように細かく設定することで必要なアクションが見えてきます。
PPC・SEO SoVの場合、ターゲットキーワードにまつわるコンテンツの定期的な公開や既存コンテンツの最適化などのアクションが考えられます。ソーシャルメディア・メディアSoVの場合はどの記事やツイートをどのタイミングで、どんな間隔で共有するかなどの緻密な計画が必要です。これらを各チャネルごとに整理してマーケティングカレンダーに追加し計画的にマーケティングコンテンツの作成や編集、共有をしてターゲットのSoV値まであげる、継続的な努力が必要です。
SEOと同じく、SoVも改善傾向が見られるまでに一定の時間がかかります。中長期の目標を設定しPRやコンテンツチームなどマーケティングチーム全体でコツコツ努力を続けることが大切です。
まとめ
SoVは広告領域では古くから慣れ親しまれてきた指標ではありますが、今日はマーケティングチャネルが爆発的に増えたこと、攻めの広報活動に取り組み企業が増えてきたことで、広報・マーケティングが連動しながらSoVを把握し、認知を高めていく必要があります。
特に購買活動がオンラインに急激に移行している状況下では、検索エンジンやSNSにおけるSoVという、新たな概念を取り入れ、成果が出せるように取り組みを進めていきましょう。