マーケティングでチャットボットを活用する

November 30, 2023

ここ数年、AIが一気に一般的なものとなりました。マーケティング領域では情報収集やクリエイティブ制作などでAIが活用されることが増えてきていますが、直接的な成果をもたらすものとしてチャットボットを通じた顧客コミュニケーションの自動化があります。

の記事では、チャットボットを活用し、マーケティングを行うための情報を紹介します。

チャットボットマーケティングとは?

チャットボットマーケティングとは、Webサイトやアプリ、SNS上などで、自動化されたメッセージのやり取りを通じて見込み客や顧客が求める情報を提供し、関係を深めるマーケティング手法です。その結果として収益を生み出すことを目的としています。

マーケティング戦略の中にチャットボットを組み込むことで、企業はマーケティングチームや営業チームがオンラインであるかどうかに関係なく、いつどんな状況でもリードを獲得し、エンゲージすることができます。チャットボットを使ってサポートへの質問に答えるのと同じように、チャットボットを使ってWebサイトの訪問者と会話を始め、検討度の高いリードの絞り込みや、顧客のアップセルを行うことができます

チャットボットは人が裏で動くものではなく、あらかじめ定義しておいたルールに基づいて、リードや見込み客に見てもらいたいメッセージを正確に送信します。例えば、サービスに登録していないウェブサイト訪問者にだけボットを表示させることも可能です。また、サービスに登録していない訪問者の中で、料金ページを30秒以上閲覧している人だけにボットを表示させる、ような設計も可能です。

チャットボットをマーケティングに活用するメリット

チャットボットを利用するメリットは、時間を問わず顧客コミュニケーションを行えることです。業務時間外でも応対することができますし、業務時間内であっても人手をかけることなく顧客にアプローチできるため、貴重な時間を節約してくれます。ここでは、チャットボットが自動化できるシナリオをいくつか紹介します。

リードのエンゲージとクオリフィケーション

チャットボットを使用して、Webサイトの訪問者に「お困りごとはありますか?」などの簡単なメッセージを表示させたり、短い動画などを流したりすることで会話のきっかけを作ります。その後、ボットはさらに質問を続け、メールアドレスや企業規模など、ターゲットの絞り込みに必要な属性情報を収集することができます。

これらの情報と、企業データベースなどのデータエンリッチメントツールから収集した情報を使用してユーザーをセグメント化し、次のアプローチをさらにパーソナライズします。例えば、初回訪問者にはまずメルマガに登録するよう促し、再訪問ユーザーには製品デモを予約するよう促す、などです。

検討度の高い見込み客を営業に伝える

価格ページを長時間閲覧していたり、Webサイト内の「詳細を見る」ボタンをクリックしたりしている訪問者は、製品に真剣に興味を持っている可能性が高いです。そういった方々には、チャットボットを通じて即座に営業チームとの打ち合わせを打診できます。

ナーチャリングとアップセル 

サービスの無料トライアルを提供している場合には、チャットボットは初期設定が完了していないユーザーにヘルプを案内したり、トライアル期間が終了しようとしているユーザーに本契約を促したりすることができます。既存顧客に対しては、サイト訪問時に新機能を知らせたり、アップグレードに興味がありそうな動きをしていれば営業担当者に通知したりすることもできます。

チャットボットの効果的な活用に必要なこと

チャットボットはAIによって自動でコミュニケーションを行ってくれる便利なツールではありますが、ただ導入したからといって望ましい効果につながるとは限りません。チャットボットを効果的に活用するために必要なポイントをいくつか紹介します。

1.人的コミュニケーションへのリアルタイムな切り替え

リアルタイムなコミュニケーションは、見込み客のニーズを維持し、高める上で非常に重要な要素です。最初のアプローチは多くの人に対応するために自動で行いますが、Webサイトの訪問者が商品・サービスを検討している場合には、人力でのライブチャットが利用可能であることを知らせます。

訪問者のアクティビティに基づいて、チャットボットはチャットを開始し、営業チームを会話に参加させることができます。担当者は、訪問者の閲覧履歴や購買意向を示すアクションを確認しながら会話をカスタマイズできます。その結果、求める情報を得られた見込み客のエンゲージメントを高め、より自信を持って意思決定プロセスを進めることができます。

2.メッセージのパーソナライズ

チャットボットは、見込み客や顧客と迅速にエンゲージするのに役立ちます。しかし、他のマーケティングチャネルと同様に、チャットの内容で価値を感じてもらう必要があります。

Folloze Researchによると、B2Bの営業・マーケティング担当者の77%は、パーソナライズされたマーケティング体験が顧客との関係を改善すると考えています。

チャットボットをMAやCRMと統合することによって、顧客情報に基づいてパーソナライズされたメッセージを含むチャットを簡単に設定することができます。そうすることで、データベース内で実名化されている顧客であれば名前を呼んで挨拶し、閲覧履歴に基づいて会話をパーソナライズすることができます。

例えば、コンテンツのページに長時間滞在していた場合には、関連するコンテンツを追加で提供しましょう。Webサイトのリピーターであれば再来訪を歓迎し、サポートする用意があることを伝えましょう。パーソナライズにあたっては細かなシナリオを作る必要はなく、なるべくシンプルに運用できることも重要です。

3.エンゲージメント履歴に基づいて会話を行う

インサイドセールスを抱える組織では、過去のエンゲージメント履歴は非常に大切な情報です。時間が経過しても見込み客の興味を引き続けるために、過去のやりとりを活用しましょう。会話を続ける中で関係を築き、その過程でコンバージョンさせたいのです。

Webサイトから離脱する兆候があれば、エンゲージメント履歴に基づいた会話を行うためにチャットボットを起動させます。自動のチャットを通じて、見込み客がWebサイトの情報を見るだけでは解決できなかった問題に対処することができます。

さらに、訪問者の過去のやり取りを紐付けられていれば、営業チームはそのデータを使用して、見込み客が購買プロセスのどの段階にあるかを理解することができ、その情報を人力のチャットに活かしたり、オフラインの際の会話のきっかけに使うこともできます。

4.営業チームのトレーニング 

チャットボットは、自動化されたコミュニケーション営業担当者へのチャットの引き渡しなど、リードジェネレーション施策に貢献する強力なツールです。しかしながら、営業チームがさらに一貫したコミュニケーションを続けることが顧客獲得のためには非常に重要です。

自動のボットから人的なコミュニケーションへ切り替える際のベストプラクティスを見つけ、全員が取り組むことができるよう、営業チームをトレーニングしてください。具体的には、チームメンバーが製品やサービスのことを詳細に理解し、また、Webサイトにはどのような情報が記載されているかを知ることが重要です。また、チャットを通じたカジュアルなコミュニケーションがブランドボイスに沿ったものであることの理解と、Webサイト上の見込み客の中でリアルタイムで優先順位をつける方法を教えることなども求められます。

チャットボットの優れた点は、複数の訪問者に同時に対応できることです。営業担当者がこのことを認識すれば、同時に多数の問い合わせを処理し、リードの興味を失うことなく複数の会話を続けることに慣れるでしょう。

マーケティングにおけるチャットボットの活用事例

それでは、具体的にマーケティングにチャットボットを活用している事例にはどんなものがあるのでしょうか。

アーセナル

イングランドのサッカー強豪チーム、アーセナル・フットボール・クラブ(FC)は、チャットボットを使って視聴者とエンゲージしながらクラブのプロモーションを行っています。アーセナルの取り組みは、タイムリーなコンテンツの配信や、カスタマーサポート以外の用途でもボットを活用できる素晴らしい例でもあります。

アーセナルはチャットボットをロボット・ピレスと名付け、チームのコーチとして登場させています。

ロボットは、サッカーファンにクラブの最新ニュース、今後の試合予定、試合のリアルタイム速報などの情報を紹介します。さらに、次の試合のチケットを購入したり、選手のスタッツを見たり、選手のインタビューやチームの勝利の瞬間のビデオを探したりすることもできます。コアなファンに対しては、レポートや分析、試合の実況解説など、より深く楽しむための情報も提供しています。

ユーザーは通知をカスタマイズしたり、好きなトピックや選手をフォローしたりすることができ、この情報を用いてさらにパーソナライズされた体験を届けることができています。このチャットボットは、Slack、Skype、Telegram、Messengerで利用できます。

アムトラック

米国とカナダの鉄道サービスであるアムトラックは、顧客が好きな目的地までの最短ルートを検索できるチャットボットを使用しています。チャットボットは、顧客が何をしたいか(チケットの予約など)、旅のタイプ(片道か往復かなど)、出発日を尋ねます。

調査では、チャットボットによって購入プロセスを迅速化・簡素化することで、予約率を25%向上させることができ、ユーザーエンゲージメントとカスタマーサービスが50%上昇したという結果が出ています。

チャットボットの効果測定指標

上記のように、チャットボットはリード獲得、ホットリードの創出、ナーチャリング、アップセル機会の創出など、さまざまな効果が見込めるツールですが、一般的にはどのような指標を用いて効果測定を行えばよいのでしょうか。

訪問者のエンゲージ率

Webサイトの訪問者がウィジェットの表示や最初のメッセージでチャットボットをクリックし、AIとの会話をはじめた回数や割合。

人的対応への転換率

チャットボットによる自動応答ではなく、担当者が対応した会話の数を分析します。チャットの利用回数から人の対応へ切り替わった数を割って算出します。

訪問者のコンバージョン率

チャットボットの会話からリード情報の獲得や購入に至った人の割合を測定します。

Webサイト訪問者直帰率

ボットとの対話やリード情報を入力せずにWebサイトを離脱した訪問者の数。

顧客満足度

チャットボット利用後のフィードバックサーベイを使用して、顧客がチャットボットとの会話にどの程度満足しているかを測定します。

まとめ

AIの性能が進化し広く利用されるようになり、AIが搭載されたチャットボットによる自動でのコミュニケーションの可能性が大きく広がりました。そして、その利用用途もカスタマーサポート中心だったところから、ビジネスのユースケースを問わずあらゆる企業のマーケティング活動に使うことができるようになっています。

WebサイトやSNSなどでの満足度向上や、コンバージョン増加のために、ぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてインターン終了後、渡米。シリコンバレーのEd Tech企業、Courseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」(MarkeZine BOOKS)と、レベニューオペレーション(RevOps)の教科書 部門間のデータ連携を図り収益を最大化する米国発の新常識(MarkeZine BOOKS)がある。

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