株式会社JTB
マーケティングオペレーションモデルにより再現性ある成果とマーケターの生産性向上を実現

左より、今井 希氏、木下 美穂氏、太田 菜香子氏、大泉 智敬氏、森 淳氏
インタビューにご協力いただいた方々
株式会社JTB
ビジネスソリューション事業本部事業推進部マーケティングチーム(以下、BS事業本部マーケティングチーム)
- 森 淳氏
グループ本社 ブランド・マーケティング・広報チーム
- 今井 希氏
※部署・役職は取材日時点
1912年の創立以来、旅行の枠にとどまらず、「交流創造事業」を展開する株式会社JTB。ビジネスソリューション事業本部では企業課題を起点に、社内外の幅広い商品・サービス提供を通じて企業に関わるコミュニケーション課題を中心とした各種課題解決を図っています。この記事では、グループ本社のマーケティング部門と事業本部のマーケティング部門とがともに取り組んだマーケティングオペレーションのプレイブックのプロジェクトについて振り返ります。
本プロジェクトでのお取り組みと背景
各部門の取り組みと役割
森様:私の所属するBS事業本部マーケティングチームはBtoBが担当領域であり、特定のお客様に向けたABM戦略、法人市場全体に向けたマーケティング戦略の2軸でマーケティング活動の実行を担っています。2024年度は従来のペルソナ分析からN1分析を進めてお客様の解像度を高め、理解を深めて課題にしっかり寄り添ったマーケティング活動に注力してきました。
今井様:コーポレートマーケティング部門では全社のマーケティング投資対効果の最大化を目指して活動しています。直近での注力テーマとしてはマーケティングキャンペーンの成果可視化を強化していくというものです。昨年から森の所属するBS事業本部マーケティングチームと連携しての取り組みを開始しました。半年をかけてプレイブック策定を実施したのち、現在はキャンペーンマネジメントの実装に取り組んでいます。加えてこれからはBtoBのグローバル市場やBtoCの取り組み方針を議論し始めています。
プレイブックのプロジェクトの位置づけ
今井様:BS事業本部マーケティングチームでは様々な施策に取り組み、売上貢献を目指して活動しています。本来もっと成果が出ている可能性があるにもかかわらず、可視化できていないのではないかという仮説と課題感を持っていました。共通の指標がない中でプロセスを作っても検証ができるようにはなりません。そんな中で、マーケティングオペレーションという考え方の必要性に気づき、まずはBtoBの領域から取り組みを開始することになりました。
森様:チーム内部で実施している施策は増えてきていましたが、それぞれの取り組みを同じモノサシで測ることが困難な状況で、ROIの検証だけでなく、短期的な効果測定の定義を共通化して検証できるようにする必要性を感じていました。また、フィールドマーケターの取り組む施策が属人的になっている側面もあり、平準化して再現性を持って組織的に取り組めるようにしていくことも目指しており、マーケティングオペレーションを構築することによってそれらの課題を解決できるのではないかと期待していました。

ゼロワングロースを選んだ理由
今井様:きっかけは、CMOからマーケティングオペレーションの重要性を聞き、まずは理解を深めるために『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書』を読んだことです。実際に、MOpsの概念を体系的に学べるだけでなく、実践的な視点も得られる内容で、より深く理解を進める必要があると感じました。さらに、その書籍の著者であり、MOps領域のパイオニアでもある01GROWTH社は、最新の事例やトレンドにも精通しており、高い専門性を持つ企業であるとわかりました。そこで、私たちのチームは01GROWTH社を伴走パートナーとしてお願いすることにしました。
プロジェクトの成果
森様:プレイブックでは、BS事業本部マーケティングチームで取り組んでいたABM戦略のレベニュープロセス、新規重点拡大を目指すデマンドジェンレーション、既存重点拡大といったカスタマーマーケティングのプロセスなどを再整理しました。これまで取り組んできたことの実効性を理解したり、新たな課題を発見したりしながら、各領域におけるマーケティング活動をこれまでよりも自信をもって推進できるようになりました。プロジェクト開始前にもマーケティングオートメーションの最適化に向けたチューニングに着手しており、当時は手探り状態でしたが、結果的にやろうとしていたことが間違いではなかったとわかり、私たちの取り組む方向性にお墨付きをいただけたように感じています。一方でキャンペーンマネジメントが属人的になっているという課題を改めて認識できました。
今井様:BS事業本部マーケティングチームの活動の良いところと、より伸ばせるところをうまく言語化してもらえたプロジェクトだったと思います。それぞれがなんとなく理解していたことを、共通認識を持って改めて理解を深めることもできました。できたらいいのにと悩んでいたことを課題として再認識できたうえに、まだ見つけられていなかった課題を浮き彫りにしてもらえたとも思っています。ABMとデマンドジェネレーションのターゲットの考え方やSFAの中での管理の方法などがまさにそうでした。複雑に絡み合っていたように思っていたものの要因を正しく捉え直すことができました。
森様:同じ言葉を使用し、同じ業務を行っていたとしても人によってイメージしているものが異なっていたということがあると思います。また、成果や指標の捉え方も人によって異なってしまうこともあるでしょう。総論で理解しあっていたとしても、そのズレによって各論で噛み合わなくなってしまうケースが生じていると感じます。そういう意味でも、言葉の定義や区分けを共通化し明文化したプレイブックに立ち戻れることはとても重要なことだと思います。
今井様:特に弊社のような組織規模では、共通言語化はメリットが多いように感じます。システム開発同様に、プロセスは重要だと理解できました。戦術部分を作ることでしっかり価値を感じて活動できるんだと思います。プレイブックを経て、着手し始めたキャンペーンマネジメントからまず取り組んでいくことはインパクトが大きいと考えているからこそです。

これからの展望
今井様:半年の取り組みを経て、プレイブックの第一版が完成しました。そして今、その実装が開始されています。レベニュープロセス、オペレーションモデルの再構築におけるテーマはいくつか上げられていますが、まずはフィールドマーケターの活動にもインパクトがあるキャンペーンマネジメントから着手しています。キャンペーンリクエストフォームのテスト運用を開始し、データ蓄積を実施していきます。森と取り組んでいるROI評価をどう定めて可視化していくかを決めながらJTBのマーケティングオペレーションをしっかり形にしていきたいと思います。
森様:キャンペーンマネジメントに取り組むことでオペレーションモデルの最適化と効率性向上が実現可能と考えています。キャンペーンのデータをただ蓄積するだけではなく、しっかりと分析し活用することで効果的なマーケティング施策の展開に取り組んでいきます。また、データを活用することで、今後取り組むべき重要項目やより効果的なマーケティング戦略策定の意思決定ができるように整えていきたいと考えています。
今井様:キャンペーンマネジメントは、成果を可視化して共通のモノサシを持つことを達成できるだけではなく、タスクマネジメントの領域にも効果的に寄与できると考えています。これまで以上に生産性高くコンテンツ制作やマーケティング施策の効率を改善していきたいです。特にAIの台頭により、生産性が劇的に改善されていくでしょう。AIを正しく活用していくためにも、このデータの整備の取り組みはとても有益なものだと確信しています。営業が強いと言われているJTBにおいて、マーケティングの要素が加わることで、よりお客様に価値提供できる強い組織になると思っています。
森様:「JTB BtoB MOps」を構築することで、まずはJTB内でマーケティングの効果検証を画一的なものとして確立します。その先にはグループ会社のJTBコミュニケーションデザイン、JTBビジネストラベルソリューションズにも展開していくことを目指しています。最終的には、私たちビジネスソリューション本部含む3つの事業会社で同じ共通言語、モノサシで効果検証できるようにしていく計画です。
ゼロワングロースへの期待
今井様:アドバイザリーセッションで悩んだり迷ったりすることについて戦略・戦術及びテクノロジーの側面でアドバイスをいただけることはとても心強く思っています。懸念を解消したり、判断を早期に実施できることにつながっています。日々前進できている感覚を持てているのでこれからも継続してお願いしていきたいです。
マーケティング領域の国内外のトレンドや最新情報を共有いただけることは、単純に学びになるだけではなく、JTBではどうしていく余地があるのかを整理するきっかけや材料になっています。今後は国内のBtoBでの活動をより洗練させていくことに加えて、グローバルの強化やBtoC領域への転用も見据え取り組んでいくので、全社的な取り組みにおいて引き続きサポートしていただけることを期待しています。