旭化成株式会社 モビリティ&インダストリアル事業本部様
マーケティングオペレーション構築とインサイドセールスにより営業連携強化・商談創出を実現

お話を伺った方々
旭化成株式会社
モビリティ&インダストリアル事業本部
戦略推進部デジタルマーケティング推進室機能樹脂デジタルマーケティンググループ
- グループ長 崎田 雄大様
- 奥 ひかり様
- 堤 祥子様
取材日:2025年1月23日。お役職は取材日時点のものとなります。
2022年で創業100周年を迎えた総合化学メーカーの旭化成株式会社は、2024年から「デジタルノーマル期」と位置付け全社的にDXを推進しています。同社のモビリティ&インダストリアル事業本部は一般のプラスチックと比較して耐熱性や強度といった機械特性がはるかに優れた材料であるエンジニアリングプラスチック(エンプラ)などを提供しています。従来の営業活動を主軸とする顧客ニーズ収集に加えて、デジタルチャネルの活用に向け、2021年4月に「旭化成 エンジニアリングプラスチック総合情報サイト」をオープン。デジタルマーケティングと営業の連携を強化し新規市場開拓を実現していくべく、マーケティングオペレーション構築とインサイドセールスの活用に取り組みました。本記事では、マーケティングオペレーション構築を支援したゼロワングロースとインサイドセールスのアウトソーシングを担ったブリッジインターナショナルの2社からのインタビュー形式でプロジェクトを代表する3名様と振り返ります。
マーケティングオペレーション構築、インサイドセールスを活用した営業連携強化に取り組む背景
(崎田様)当社のエンジニアリングプラスチック事業は、90年代後半より中国、アメリカ、ヨーロッパ、アセアン地域への海外展開を進め、現地での生産体制を整備しながら主にそれまでの既存取引先である日系自動車メーカー向けに事業を展開してきました。しかし、2010年代以降市場が大きく変化し、今までのやり方から進化する必要性に迫られました。海外メーカーが存在感を増していったことで、従来の日系メーカー向けのビジネスに加えて、新規顧客開拓のための新しいテーマ作りが必要だという危機感が生まれました。日本国内では一定の認知度を持つ「旭化成」というブランドも海外企業に対しては同じレベルでは認知されていませんでした。その状況で、プレゼンスを高めて新たなビジネスを創出するためには、マーケティングの力なしには実現できないと考えていました。

(奥様)2021年から立ち上げたウェブサイトを基盤に当時のチームメンバーで国内外のマーケティング施策を手分けして進めていました。さまざまな施策を展開し、コンテンツを量産して問い合わせ数を増やすことに全力を注いでいました。ただ、問い合わせが増えても、それが本当に質の高い問い合わせなのか、その後のプロセスでどう生かされるのかが見えない部分が大きく、ここに課題を感じていました。また、営業との連携が強固とは言えず、達成すべき売上目標を見据えた戦術設計についてはまだ試行錯誤の段階でした。
(堤様)たしかに施策を実行することで問い合わせは増えていました。でもそれが良い問い合わせだったのかはわからない状況でした。一般的に活用されているマーケティングオートメーションのスコアリングがエンプラ事業のビジネスに寄与できるものなのかイメージもわかず、手探りのまま進んでいました。今振り返ってみると、今回はただのマーケティングオペレーション構築プロジェクトではなく、当社の事業全体の方向性を変える転換点だったかもしれません。
今回のプレイブック策定のプロジェクトに取り組むことで、戦術を体系化するプロセスを進めました。オペレーションモデルを作り、稼働させて、デマンドジェネレーションの一連の商談を供給するところまでを非常に早期に実施できた経験は私にとっても大きな転機になったと思います。
ゼロワングロース、ブリッジインターナショナルをパートナーに選定した理由
(奥様)ゼロワングロースとの最初の出会いは、旭化成グループ向けの講演でした。その講演の内容を聞いて、数字で語るマーケティングの収益成果という発想にすごく感銘を受けました。丸井さんのマーケティングの収益効果を可視化する方法をうかがった際に、当時のリーダーとこれを実践したいと話していました。収益効果の可視化においては標準的なモデルがあることを初めて知り、そのプロジェクトをエンプラ事業で実施できるとなった時には非常にうれしかったです。
(堤様)業界の第一人者であるゼロワングロースに依頼できるのはとても心強いことでした。実際にプロジェクト開始後も的確に疑問点を解決してくださり、とても助けられました。社内向けの講演や『数字志向のマーケティング』を読んだときから関心があった領域だったので、当社のデジタル共創本部からプロジェクトの話が来たときにはとても楽しみにしていました。
(崎田様)ブリッジインターナショナルを選んだ理由は、2つあります。まず1つ目は、ゼロワングロースからの紹介だったことです。プロジェクトを進める中ですでに信頼できるパートナーになっていたゼロワングロースが紹介するならば問題ないだろうと思いました。もう1つは、提案内容に納得感があったからです。他の企業とも比較した中でも特に、提案内容に対して信頼できるものを感じました。マーケティングオペレーションにおいての第一人者がゼロワングロースであるように、インサイドセールス領域におけるパイオニアであるブリッジインターナショナルに頼めるのは心強かったです。
プロジェクトの成果
(堤様)当時を振り返ると、ウェブや展示会などで獲得したリードをどういうプロセスとルールで営業に引き渡すかの設計ができておらず、とにかくウェブへの流入数を増やすことをプロジェクト前は目指していました。このプロジェクトを経て、リードハンドオフのプロセスを整備し、システム面でもAdobe Marketo EngageとSalesforceが連携したことによって、引き渡し後のリードの状況を把握できるようになりました。
(奥様)堤とともに二人三脚で進めてきましたが、プロジェクトを経て取り組めるプログラムの数もスピードも大幅に向上しています。また、先行してマーケティングオペレーションモデルのプレイブック化に取り組んでいた旭化成エレクトロニクスとも情報交換をしながら、洗練させていくことができ、やれることの幅は広がりました。

(堤様)細かい話にはなりますが、プロジェクト開始当初はメール配信とフォームにのみ活用していたAdobe Marketo Engageが今ではもうほぼ全ての機能を把握して使いこなせる状態にもなっています。Salesforce含め、テクノロジーの設計思想を理解し、標準的なオペレーションモデルの知識を習得したことによって、本質的な意味でのテクノロジー活用に進化できています。
マーケティング起点の商談創出
(崎田様)定量的な成果としてはやはり、どれくらいの有望な商談を営業に引き渡せているかという点ですが、そこは確実に効果が出ています。かつて営業を担っていたこともあり、筋のよいテーマの感覚値はあると思っていますが、最近も筋のよさそうなテーマが増えている実感があります。ターゲットオーディエンスを設定し、そのオーディエンスに対してバリュープロポジションを定義し直したことで、関心をお持ちいただけるお客様が増えてきているように感じます。営業部隊からのマーケティングへの期待が高まっているようにも思います。元々は営業部隊からは「いろいろやってくれてるよね」という感じだったのが、今では「一緒にやっていこう」という前向きな意見が増えてきました。
(奥様)ザイロンという製品に始まり、マーケティング起点での商談創出が増えてきたことで、他の製品の営業もマーケティングの取り組みに興味を示してくれるようになってきています。ザイロンでわかりやすく成果を出すことができたことで、営業とマーケティングの連携による売上創出という考え方が組織的に広がりを見せていることには手応えを感じています。
(堤様)たしかに、営業との連携は進んできていますね。営業から特定の顧客向けにこのような取り組みを実施したいといった相談が出てきています。このターゲットにこういうキャンペーンを実践したいという相談が増えてきているのはとても嬉しいです。プロジェクト開始前は可視化されていなかったマーケティング起点での商談が今では通年で200〜300件程度の商談をマーケティングがコンスタントに生み出すことができるようになってきています。
(奥様)今回のプロジェクトでは、かつて営業戦略を見ていた崎田がマーケティングオペレーションに異動したことによって、営業組織との連携強化やインサイドセールスの取り組みの導入を進めやすかったようにも思います。データや組織のサイロ化の排除には組織モデルやガバナンスが重要な鍵を握っていることを実感できました。
インサイドセールスのアウトソーシングについて
(崎田様)成果は非常によかったマーケティングオペレーション構築とインサイドセールスの取り組みですが、当初はインサイドセールスのアウトソーシングには懐疑的でした。エンプラなどのBtoBの素材産業は、サプライチェーンの上流ですので、特に詳しくない方からすると他社との違いもよくわからないものだと思います。そういった理由から、アウトソーシングで商談機会を作るなど無謀だと思っていました。もちろん難しいこともありましたが、取り組んでみると成果の大きさに驚きました。
このインサイドセールスの取り組みによって生まれた商談の内訳をみても、仮にアウトソーシングしていなければ生まれなかったと確信しています。既存の営業活動を実施しながら個別のリードのフォローアップに時間を割くことはなかなかできないですが、展示会での接点から普段ならアプローチできていなかった層の商談が生まれています。

インサイドセールスがこういった活動を担ってくれることで、営業担当者は自分の強みである提案やクロージングにもっと集中できるようになり、営業の生産性を向上させることができます。継続性のある取り組みにしていきたいと考えており、営業側のリソース状況をみて引き続き取り組んでいきたいです。
難易度が高く専門知識が必要な領域であったとしても、業務がきちんと整理されてプロセスマネジメントされていれば、アウトソーシングにより効果が出すことができるというのはとてもいい発見でした。これは旭化成のエンプラ事業として競合優位性になっていくと思います。
今後の展望、ゼロワングロース・ブリッジインターナショナルへの期待
(崎田様)事業を進める上では、やはり利益をしっかりと上げていくことが重要です。マーケットインのアプローチにより市場のニーズに合わせてコンセプトをしっかり作り、展開していくことが求められます。ブリッジインターナショナルとは、インサイドセールスのまずは営業リソースに応じた支援をお願いしながら、収益貢献できるマーケティング組織としてより洗練させていく過程をサポートしてもらえればと思っています。
(奥様)多面的に支援いただきながら、引き続き様々なご提案もいただければと思います。今回、ゼロワングロースからの紹介をきっかけに始まったブリッジインターナショナルのインサイドセールスの取り組みは発見も多かったです。この成功がまた次のチャレンジにもつながると思うので引き続き、新しい情報の共有や提案を含めた伴走サポートをよろしくお願いいたします。
(崎田様)日本の素材産業はもっと利益を上げられる実力があると考えています。それには、やはりリソースをどう使うか、効率よく運営を進めるかが鍵です。その中でデジタルを駆使して、適切に情報を拡散し、収益を上げる体制を作ることが、今後の成長に欠かせない要素だと考えています。セールス&マーケティングは進化の早い領域であるとともに、今はAIなど大きな変革期でもあるため、ゼロワングロースからのグローバルの最新トレンドの共有は引き続き期待しています。