AMPメールのメリットとデメリット

最終アップデート: 
January 26, 2023

2018年にGoogleがAmplified Mobile Pages For Email (AMP for Email)を発表して早3年が過ぎました。今日はその詳細をご紹介します。

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2018年にGoogleがAmplified Mobile Pages For Email (AMP for Email)を発表して早3年が過ぎました。発表当初はメールを革新させるテクノロジーだと大きな話題になったものの、様々な理由からまだ活用しているのは大企業の一部のみです。今日はAMPメールのメリットとデメリットと、実際の活用事例も合わせてご紹介したいとおもいます。


そもそもAMPメールとは

ご存知の通り、今までメールはテキストのみのテキストメールと、静的なHTMLメールの2種類でした。2015年、Googleはモバイルデバイス上のページロードスピードを加速するためのオープソーステクノロジーとしてAMPを発表しました。そして2018年、そのテクノロジーを使ったEメール、AMPメールを発表し2019年の春にロールアウトしました。

AMPメールは動的なメールで、ウェブサイトのような機能がメール上でできるのが特徴です。メールボックスを離れずにフォームの入力やタブの切り替え、商品の購入などインタラクティブな体験を実現することができます。従来のHTMLメールではリンクなどのクリックスルーが必要不可欠だったものが、メールボックス内でアクションを完結できるのは大きな利点で、エンゲージメントやコンバージョンの向上が大きく期待できる機能です。


AMPメールのデメリット

  • 工数がかかる

    1. 3つのMIMEを用意しなければいけない
    現状のHTMLメールでは、受信者がHTMLを読み込めなかった場合を考えてテキストとHTMLの2種類のMIMEタイプを用意する必要があります。これと同様、AMPメールを作成する際はAMP MIMEを作成し、AMP/HTML/テキストの3本立てで作らなければいけません。

    2. マーケター/エンジニアがAMPのコーディング/マークアップランゲージを習得しなければいけない
    AMPメールを作成する場合はマーケターもしくはエンジニアがAMPのコーディング/マークアップランゲージを習得しなければいけません。JavascriptやAMPについてある程度の知識がある担当者がいないと少し難しいかもしれません。


  • サポート環境が限られている
    2021年8月現在、AMPをサポートしているESPは以下です。以前よりは増えたものの日本でのサービスがないものもあるため、実際に日本のユーザーが使う際の選択肢はさらに狭まってしまうでしょう。


引用: AMP公式ホームページ


また、AMPがサポートされているメールクライアントは以下3つのみです。日本はGmailとYahoo Mailのユーザー割合がアメリカなどに比べると多いため有利ですがビジネスユーザーの多いOutlookがサポートされていないことから、B2Bプレイヤーにとっては大きなマイナスポイントになるでしょう。

  1. Gmail
  2. Mail.ru
  3. Yahoo Mail


  • 実績が必要

AMPメールはそもそも、マスEメールの配信履歴があり、スパムレポート率が低くなければ使うことができません。全てのガイドラインはこちらで確認できますが、今までの実績が少ない・悪い場合はある程度HTMLで経験を積んでからということになるでしょう。


AMPメールのメリット

  • 定型コードがある
    HTMLやCSSでインタラクティブなメールを作る際はコードハックを駆使しますが、Eメールクライアント側で保証されているわけではないため、ポリシーが変わった場合には大きな問題になってしまいます。一方、AMPメールは定型コードがあるため安心して使用することができます。

  • リアルタイムにコンテンツを更新できる
    AMPメールはメール送信後もコンテンツをリアルタイムに更新することができます。今までもサードパーティベンダーを使えば可能でしたが、AMPメールはそれらを使わずにライブコンテンツをホストすることができるのです。求人情報などタイムセンシティブな内容でも受信者がメールを開くたびにリアルタイムの情報をメール上で確認できるのは大きな利点です。

  • 高いエンゲージメントやコンバージョンが期待できる
    前述の通りメールの受信ボックス内でコンテンツの閲覧やコメントの返信、フォームの入力などのアクションが実現できるため、エンゲージメントやコンバージョンの向上に大きく期待ができます。同時にメール上でのアクションが増えればランディングページ上のエンゲージメントやコンバージョンが落ちることも考えられます。HTMLメールとは違うエンゲージメントメトリクスが必要になるかもしれません。


AMPメールの活用例

AMPメールのハードルが高いことはわかりました。様々な投資が必要なこともあり一般的にはAMPはまだ普及していませんが、その可能性がとても大きいことは明らかです。以下に活用例を2つ挙げました。


OYO

インドの旅行予約サイト、OYOはメール画面でホテルのリコメンドを表示し、ランディングページに誘導することなくレビューやチェックイン/アウト時間などの情報を表示しました。これにより、クリックスルー率は57%向上、コンバージョン率は脅威の60%向上を実現しました。


引用: AMP KEYNOTE




Gsuite

下の動画はGoogle Docsのコメント返信をメールボックスの中からしている例です。Google DocsはAMPメールを使ったことでコメントの返信率が500%増加したというデータも出ています。


引用: AMP KEYNOTE


まとめ

AMPメールを取り入れるには様々な投資や環境を整えることが必要ですが、正しくその機能を使えば、Eメールマーケティングの可能性を何倍にも大きくする可能性を秘めています。今後サポートするESPやメールクライアントなどが増えればAMPメールの活用も増えてくるでしょう。今のうちからAMPを取り入れる計画や、準備を進めておくのも良いかもしれません。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。