マーケティング/セールスSLAの設定方法

最終アップデート: 
January 26, 2023

マーケティングとセールスのパスがスムーズにいくかどうかはCV率や売上にも影響する大きな要因です。マーケティングとセールス間のSLAについてご紹介します。

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突然ですが、マーケティングとセールスチームとの間にSLA (Service Level Agreement)を設けていますか?マーケティングとセールスのミスアライメントはよく議論される内容で、頭を悩ませていらっしゃる方も多いトピックでしょう。マーケティングとセールスのパスがスムーズにいくかどうかはCV率や売上にも影響する大きな要因です。マーケティングがとってくるリードは質が低い、セールスにせっかくホットなリードを渡したのにフォローアップしてくれないなど、マーケティングとセールス間の様々なすれ違いから大きな溝へ発展してしまっているケースも多々あります。Linkedinの調べでは、実にセールスとマーケティングリーダーの87%が両部門間の連携をビジネス成長において非常に重要だと述べています。マーケティングとセールスは同じ目標に向かって共同で働くバディーのような関係になるためにも、SLAを定めることが大切です。今日はマーケティングとセールス間のSLAで盛り込むべき内容や例をご紹介します。


SLAとは?

SLAは日本語ではサービスレベル合意書などと訳されることが多いですが、簡単に言うとルールブックのようなものです。カスタマーSLAと言ったら会社と顧客間のルールブック、インターナルSLAは会社内のルールブックと言ったように様々なSLAが存在します。顧客間やアウトソーシングなどする際にはSLAを設定しているけど、社内では使っていないというケースもあるでしょう。今日はインターナルSLAの中でもマーケティング・セールスSLAに集中したいと思います。また、この記事ではマーケティングとセールスの間に他の部門が関与しない想定で書いていますが、インサイドセールスなどを挟む場合はマーケティング/インサイドセールス、マーケティング/営業の二つのSLAを作る必要がある場合もあります。自社の体系に合わせたSLAを作りましょう。


マーケティング/セールスSLAに盛り込むべきトピック

会社組織や業務プロセスによってもSLAに盛り込むべきトピックは変わりますが、ここではB2B企業で代表的に取り入れられているもの、私が個人的な便利だと思うトピックをいくつかご紹介したいと思います。


  • 両部門が達成したい目標とそのために必要な各部門・共同で行うべきアクションアイテム・メトリクス

まずは両部門の目標を明確にしましょう。部門全体の目標と部門内の様々なファンクションごと、もしくはプロセスごとの目標も明確にして、それぞれのステップで両部門が確認できるアクションアイテムリストとメトリクスを詳細に設定しましょう。すでにマーケティング部門内での目標は設定してある、という場合もそれがセールス部門の目標とマッチしているか、同じタイミングでその目標を成し遂げようとしているか、メトリクスが合致しているかなどを確認することが大切です。

例えば、売り上げターゲットを達成するというセールス部門の大きな目標に対して、売り上げ目標達成に必要なリードを確保するというマーケティング部門の大きな目標があったとしましょう。一見同じ方向を向いて共同作業しているようにも見えますが、必要なリード数、ペルソナ、ハンドオフのプロセスやハンドオフ後に商談化しなかった場合の対処法など細かいところまで決まっていないと一つのずれが大きな溝を招いてしまいます。スケジュールやセールスチームのキャパシティにあった新規リードの獲得計画(月・四半期ベース)、ターゲットペルソナの共通認識、MQLとなったリードのハンドオフルール(X時間/X日以内にセールス/インサイトセールスがフォローアップする等)、X週/Xヶ月商談化しなかった場合はマーケティングにリサイクルするなどの細かい取り決めが必要なのです。

これらのアクションアイテムとメトリクスをもとにSLAに盛り込むべきものを見極めます。ターゲット数値が常に動くものや、あまりにも外的要因に影響されやすいものなどは設定の仕方を工夫したり、SLAに含めずに各月ベースで調整した方が良いものもあるかもしれません。自社のニーズやプロセスに合った項目を選ぶのが重要です。

  • それぞれのアクションアイテム・メトリクスのPOC

上記が明確化できたらそれぞれの項目に対してPOC、責任者を決めましょう。目標達成できなかった時に責める人、ではなくあくまでもそのアクションアイテムの進行具合やメトリクスを注視し、必要なアクションが取れる人、という意味です。


  • SLAで合意したアクションアイテム・メトリクスが達成できなかった時の対処法

一度ルールを形式化すると、とたんに柔軟性がなくなってしまう例もたくさんあります。また、このように部門間のルールを決めるとなると目標を達成できなかったら責められるんじゃないかと低めのゴールを設定してしまうという話も聞きますが、それでは意味がありません。もしも手を尽くして設定目標に届かなかった場合は目標自体を見直すきっかけにもなります。風通しの良い部門間連携にするためにも、目標達成できなかった場合はその事実を両部門で認識し、共通課題にすることが大切です。

同時に、目標達成できなかった理由(予算・人的リソース・外的要因など)を分析し目標自体を変更するべきか、それとも目標達成できるように状況を打開するべきなどの決定をおこないましょう。達成できなかった時点から、解決策決定までの期間なども両部門間で決めておくとスムーズでしょう。


  • SLAで合意した内容のレポーティングダッシュボード

せっかくSLAを設定してもきちんと管理できなければ無駄になってしまいます。両部門や各項目のPOCが管理しやすいようにレポーティングダッシュボードを用意できるとなお良いでしょう。下の例のようにマーケティング側では月・四半期初めからの日数とターゲットペルソナにマッチする新規リード作成数のグラフ、セールス側ではパスされたリードに対してアクションをとった日数の割合のグラフなど、SLAで合意した内容に合わせて誰でも一目で現状を確認できるようなダッシュボードを共有しましょう。こうすることで部門間に透明性が生まれ、ボトルネックになっているところが見えやすくなるという利点もあります。


まとめ

マーケティングとセールスのアライメントは会社組織、そして売り上げ全体を左右するとても重要なポイントです。部門間連携の効率性を向上し、足並みを揃えるためにもセールスチームとフラットな話し合いからはじめ、チーム全体が納得できるようなSLAを策定できると部門内で優先順位が決めやすくなったり必要なプロセスなどが見えてくるようになるでしょう。まだマーケティング/セールスSLAを活用していない方は、ぜひご参考にしてみてくださいね。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。