サードパーティインテントデータ 実際の運用から学んだ成功点と失敗点

最終アップデート: 
November 11, 2022

昨今注目されているインテントデータの活用。サードパーティインテントデータを実際に運用した際の成功点と失敗点をご紹介いたします。

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昨今注目されているインテントデータの活用。今までもファーストパーティインテントデータは自社のウェブサイト上で収集・分析することができていました。MAなどのツールがあれば、コンタクト情報獲得以前からのページ閲覧・コンテンツ消費履歴などをもとに興味関心事項を推測することができます。しかし、サードパーティインテントデータを活用することによりインテントデータの活用の幅や可能性は何倍にも広がります。インテントデータとは?という記事は見ますがなかなか実例まで言及した例はあまり見ないため、今回から2回に渡り以前にサードパーティインテントデータを実際に運用した際に気づいたことや成功点、失敗点をご紹介したいと思います。


そもそもインテントデータとは

インテントデータとはウェブユーザーの様々なコンテンツ消費行動から推測される興味関心に関するデータを指します。前述の通り、ファーストパーティインテントデータは自社のウェブサイト上で収集可能です。一方、サードパーティインテントデータは外部サイトでの閲覧情報や消費コンテンツの履歴のため、自社のウェブサイトにまだ辿り着いていない、もしくは読み取りきれない潜在顧客の広範囲な興味関心トピックやその度合いを把握することができます。

サードパーティーインテントデータプロバイダの代表格としてBomboraやINTENTDATA.IOなどが挙げられますが、インテントデータの収集方法はそれぞれ異なります。 Bomboraは全世界4000以上のパブリッシャーサイトが集まるData Co-opを保有しており、そこにダイレクトタグを埋め込むことで様々なB2B購買インテントデータを常時取集しています。一方、INTENTDATA.IOはBomboraのようなパブリッシャーネットワークは用いず、ウェブ上で一般公開されている情報をもとにリニアリグレッション分析を使ってコンタクトレベルまで掘り下げたインテントデータを提供しています。一方、未だにサードパーティクッキーやIPルックアップに頼っているブラックボックスソリューションも数多くあります。この種のベンダーのデータクオリティは大抵低く、加えて今後のサードパーティクッキー廃止を考えるとスマートなチョイスではないでしょう。



サードパーティインテントデータを使うメリット

サードパーティインテントデータの活用方法は様々ですが、  個人的にその最大のメリットは潜在見込み顧客を早期に特定することで、カスタマージャーニーの初期からエンゲージメントができることだと思います。購買行動の大部分が企業にコンタクトを取る前に行われている今、せっかくリードジェネレーションに予算を注ぎ込んでリードを獲得し、ファーストパーティインテントデータを使ってエンゲージしても、その時点ではもう心は半分競合他社に決まっているなんてことも。見込み顧客がリサーチしている段階で対象を特定しその興味関心に気づき、マーケティングメッセージを発信できたら、その予算はもっと効率の良い使い方ができるようになるでしょう。どのターゲットアカウントに高い購買意欲があるのかわかることで、ターゲットリストの精査や拡大・縮小はもちろん、より良い費用対効果でリードを獲得し、カスタマージャーニーの初期段階からエンゲージすることで効率的に精度の高いマーケティングを実現することができるのです。


インテントデータの活用例ーターゲットアカウントのリードジェネレーション

グローバル規模で精度の高いABMを目指し、Bomboraでインテントデータを取得→LinkedInで興味に沿った広告キャンペーンを打つことで効率的にリードを獲得し、それぞれのトピックのコンテンツを訴求するナーチャリングストリームでMQLへナーチャリングするキャンペーンを行いました。キャンペーン全体のキーKPIはターゲットリストの獲得リード数、LinkedIn広告キャンペーンのCV率、ナーチャリングストリームに乗せたリードのMQLへのCV率でした。


以下に運用開始までのステップと気づきを簡単に以下に挙げたいと思います。

  1. 営業/SDRチームとターゲットアカウントリストを作成する。このステップでは頻繁にCレベルが介入した上に、グローバルでの運用だったため予定していたよりも時間が大幅にかかった。グローバルでの契約を狙うWhaleアカウントに対しては、どのリージョンから最初にアプローチするかなどの細かいルールもこのステップで決めた。
  2. Bomboraのトピックリストから自社の製品・サービスに興味があると推測できるトピックを選択し、同時にいくつのトピックに興味関心を示していて、その度合いのスコアが何点以上で「インテントあり」とするかの評価基準を定める。運用してみないとわからない点もあるので最初は考えすぎないで色々試してみる。
  3. ステップ1、2と同時進行でIT部署がBombora、LinkedIn、マーケティングオートメーションのデータ連携を設定。
  4. 広告キャンペーンのクリエイティブやコピーなどの準備をする。
  5. 各トピックに合ったナーチャリングメール・コンテンツの準備を進める。
  6. ターゲットアカウントリストとトピックリストをBomboraに引き渡し、インテントデータの収集を開始する。
  7. Bombobraからのレポートをベースに、「インテントあり」と評価したアカウントに対し、部署や役職名を指定してLinkedIn上で広告キャンペーンを開始
  8. 流入してきたリードはインテント情報をもとに適したナーチャリングストリームに追加し、MQLに到達したのちSDR・営業にパスする
  9. プロセスが一巡した後はトピックが自社の製品・サービスにあっているか、そして実際にコンタクトした結果インテントがあると評価する基準点が実際の購買興味・意欲とマッチしているかなどのフィードバックを営業・SDRチームからもらい PDCAを回して自社に適正なバランスを試行錯誤。ナーチャリングメールの最適化も同時に行う。


苦労した点、成功点、失敗点

一番苦労したのは「インテントあり」と評価する基準決めでした。営業の中には本命アカウントについては、ナーチャリングでMQLに達する前でも「インテントあり」のリードはすぐに渡してほしいという担当もいました。そのため「一個人の興味だった」場合や「見当違い」なんていうこともありました。その後、「インテントあり」の評価基準の調整を繰り返し、あるラインで落ち着きました。営業・SDRチームのフィードバックをもらい、自社に適切なトピックやトピック数、スコアを見つけるまでこのように少し時間がかかることを想定しておくと良いと思います。


成功点

  • 広告キャンペーンについてはターゲットアカウントが興味のあるトピックが分かっているため、コピーやクリエイティブ、CTAなどのメッセージは大変決めやすく、そのCV率も通常のキャンペーンに比べ高い結果になりました。ナーチャリングでも興味のあるコンテンツをピンポイントで訴求できるため平均的に高いCTRを出し、MQLへのCV率もまた、通常キャンペーンよりも大変良い結果になりました。これによって質の高いリードを獲得し商談化までの期間を短縮しつつ最終的にボトムラインに大きな貢献を出したアカウントもありました。また、インテントデータが新規ターゲットアカウントの発掘や、ターゲットリストの精査・拡大縮小にも役立ちました。


失敗点

  • ターゲットアカウントに特定したキャンペーンであった上、Cレベルからのリクエストで一定以上の役職のみを狙った広告キャンペーンを打っていたため、APACインテントデータが既に少ない+取れるリード数も必然的に少なくなり、PDCAを回したくてもAPACやEMEAの一部では定量的なテストをできるほどのデータが集まりませんでした。もともと短期集中型のキャンペーンではあったのですが、それにしても網を狭くはりすぎてしまったのだと思います。その後、APACとEMEAの一部はLinkedInキャンペーンの役職フィルターを外し、North  Americaよりも一足早くリードジェネレーションを切り上げてナーチャリングに集中することにしました。インテントデータありきのキャンペーン設計だったため、それぞれの地域に見合うキャンペーンフロー調整の大事さを痛感しました。もちろん、ターゲットアカウントの企業規模が大きく、ターゲットリストのボリュームがあり、インテントデータも十分ある場合は高いパフォーマンスが期待できるでしょう。



次回は…

第二回はインテントデータを基に設計したナーチャリングストリームや、既存リード(リサイクルを含む)をインテントデータで再エンゲージしたキャンペーンの詳細をご紹介したいと思います。


Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。