あらゆるタッチポイントがデジタルに移行したことで、他部署が持っていたデータや製品利用データなど、様々なデータが蓄積できるようになっています。その結果、部門間を跨いで統括的にデータを格納・格納し、レベニュー組織で運用することのニーズが高まってきています。
近年、あらゆる企業でマーケティングテクノロジーの利用が増え、テクノロジーを通じた打ち手や蓄積されるデータが増えてきました。しかしながら、導入したテクノロジーを生かしきれているか、一定の成果は出ているとしても目に見えるほどのROIとして効果を証明できていますでしょうか。
あらゆるタッチポイントがデジタルに移行したことで、他部署が持っていたデータや製品利用データなど、さまざまなデータが蓄積できるようになっています。その結果、部門間を跨いで統括的にデータを格納・格納し、レベニュー組織で運用することのニーズが高まってきています。近年、欧米ではあらゆる企業がこれに力を入れており、レベニュープロセス全体を通したデータの一元管理を実現しています。
この流れが起きている大きな一つの理由にAIがあります。部門ごとにAIを個別最適してしまうと、結局収益早出に何が効果があったのか、その全体像を掴むことができなくなるため、部門を跨いだ大きなデータセットをもとにAIを学習させることが重要なポイントとなっているのです。
マーケティング領域では、これまでもデータを蓄積するソリューションとしてCDPやCDWが利用されてきました。CDPは特にマーケティング分野においては役立ちますが、それ以外のデータを取り扱うには不十分である上高価なため、一定のハードルがあったように思います。今後はデータ基盤の主役はCDWで、パーソナライズされた優れた顧客体験のためにCDPを使う、という流れになっていくのではないでしょうか。この記事では、マーケティング領域のみならず、レベニュー組織全体で運用の進むCDWやCDPについてご紹介いたします。
Customer Data Platform(CDP・顧客データ管理システム)とは、企業があらゆるチャネル、システム、データストリームから顧客データを収集し、統合された顧客プロファイルを構築するためのテクノロジーです。これらのツールには通常、顧客データベースと自動化機能、およびマルチチャネルキャンペーン、リアルタイムの顧客コミュニケーション、データ連携の管理リソースが含まれています。
CDP は主に 4 つの機能を担っています。データの収集、データの統合、データの活用、そしてデータからの洞察の抽出です。CDP は企業が保有するすべての顧客データを一元管理するハブとして機能し、企業はリアルタイムで統一された顧客プロファイルを作成・管理することができます。これには、マーケティングプラットフォーム、サービスソフトウェア、E コマースエンジンなど、従来はデータを共有していなかったシステムのデータも含まれます。
CDPは、一元化された顧客データを顧客対応に使用するさまざまなチームやテクノロジーで利用できるようにすることで、顧客とのやりとりをパーソナライズする上でも役立ちます。これには、メール配信エンジン、ワークフローの自動化、リアルタイム分析、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)、CMS(コンテンツ管理システム)などが含まれます。
CDPはAI、自動化、機械学習の進歩により、過去10年間で大きく進化しましたが、従来のCDPには、マーケティングやコマースにのみ焦点を当てている、データの同期に数時間かかるような制限を持つものも残っています。これに対し最新のソリューションは、リアルタイムのCDP機能を提供し、顧客データがすべてのタッチポイントで常に更新され、マーケティングからセールス、サービスまで、すべてのチームで利用できるようにしています。
一方、Cloud Data Warehouse(CDW)は、クラウドベースの環境で大量のデータを収集、保存、分析するために使用されるシステムです。リアルタイムで大量のデータを処理する必要がある企業向けのソリューションです。CDWを使用すると、ユーザーはさまざまなソースからのデータを1つの統合された場所で管理および分析することができます。
クラウドデータウェアハウスは、拡張性、パフォーマンス、コスト効率の面で大きな利点があります。 ビジネスの要件に合わせて柔軟に拡張・縮小できるため、ビッグデータの管理と分析が効率的になります。 また、さまざまなソースからのデータ統合が容易なため、分析に必要なデータを簡単に取得できます。 そのため、構造化データと非構造化データの両方を大量に扱う企業にとって、CDWは最適なソリューションです。
ただし、CDW は大量のデータを保存・管理できる一方で、CDP が提供する顧客IDの照合、リアルタイムのデータ有効化、顧客へのパーソナライズ機能などは備えていないことに留意する必要があります。
マーケティングテクノロジースタックは、いわゆる「ベスト・オブ・スイート」の統合型のスタック構築アプローチと、「ベスト・オブ・ブリード」の各機能の最適なポイントソリューションを導入するアプローチが二つの主要な考え方でした。しかし、爆発的にマーケティングツールが増えていく中でマーケティング担当者が思うような成果にはつながっておらず、ガートナー社の調査によるとマーケティングテクノロジーツールの利用率は、2020年の58%から2023年には33%に減少しています。
CDWとして有名なものは、AWS、Google Big Query、Snowflakeなどですが、これらは決して新しいソリューションではありません。ただ、これまではマーケティング部門やレベニュープロセスを管理するレベニューチームではなく、あらゆるデータを保管場所として、IT部門が管理するのが一般的でした。しかしここ数年の新しい動きとして、マーケティングから営業、カスタマーサクセスまで統合的にデータ管理・活用する動きが増え、マーケティング部門にも影響を与えるようになっています。そのため、CDWの導入や、利用用途の拡大においてはマーケティング部門の積極的な関与が不可欠となる可能性が高まっています。
このトレンドは、マーケティングテクノロジースタックが、これまでのアプリケーションを軸としたエコシステムの構築から、データエコシステムへと変化を遂げていることを意味します。これまで多くのテクノロジーは、他のテクノロジーと連携されることを期待しながら、スタック内で単体のものとして存在してきました。
しかしこのモデルには大きなリスクがあります。データの格納場所が1つではなく、それぞれのアプリケーションにデータが蓄積され、各アプリケーションの制約や活用度の問題から、連携されるデータが一部にとどまっていたのです。せっかく蓄積したデータがあるにも関わらず、アプリケーション間でそれが活用できないようでは、顧客体験向上もままなりません。データの一元管理という意味では、CDPは救世主となるはずでしたが、逆に問題を悪化させているケースもあります。というのも、CDPが持つデータマネジメント機能は、マーケティング担当者の利用を中心に設計されているため、必ずしも部門横断的に活用したいケースにおいて最適なデータマネジメントの形になっているとは限りません。マーケティング以外の部門でデータが必要な場合、マーケティングに特化したソリューションの魅力は薄れてしまいます。
CDW を使用することで、チャネル施策や分析のためのアプリケーションと、データ管理部分を切り離すことにつながります。つまり、MA、CDP、カスタマーエンゲージメントプラットフォームなど、さまざまなアプリケーションが、特定のタスクに必要なデータをCDWから取得する形で使用するのです。
その方法にはさまざまなものがありますが、CDWを中心に置くことでデータのコピーに問題が生まれる可能性は下がるでしょう。実際、CDWを導入する企業の66% は、データウェアハウスの上に以下のソリューションをスタックとして導入していると回答しています。
これらのテクノロジー自体はなじみのあるものではあります。より多くのアプリケーションがCDWと直接つながることで、CDWに接続されていないアプリは統合または冗長化の対象となり、活用度の高い、意味のあるテクノロジーに集約されていくのです。
今後、マーケティング領域でもCDWの利用が増えてくるであろうという点について紹介してきましたが、CDWを導入するということは、データの管理責任者がマーケティング以外に移ることでもあるということは認識しておきましょう。社内の関係部門と能動的に関わっていくことが求められるのです。この記事では、これまでのマーケティングテクノロジーの活用の転換が必要となる可能性について示唆しています。既存のテクノロジーの見直しなど、方針転換に迫られるため、一朝一夕に移行できるものではありませんが、役に立てば幸いです。