BtoBマーケティング効果の示し方(リフトベースメトリクス)

最終アップデート: 
July 19, 2023

BtoBの購買サイクルは長くそのプロセスも複雑なため、マーケティング施策の効果検証が難しいとされています。そんな中BtoBマーケティングの効果をどのように示していけば良いのでしょうか?

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長く複雑なBtoBの購買サイクル

BtoBの購買サイクルは最短でも半年〜長ければ数年と平均して長く、購買プロセスも複雑です。それにもかかわらず、ガートナーの調査によると、営業担当者はBtoBのバイヤーのわずか5%の時間にしかアプローチできていないそうです。デジタルチャネルを通じて質の高い情報を入手できるようになったことで、バイヤーが独自に情報を収集することが容易になり、売り手が顧客の意思決定に影響を与える機会が減少していることが大きな要因です。同調査では、BtoBのバイヤーが購入を検討しているとき、その時間のわずか17%しか潜在的なサプライヤーとの面談に費やしていないことが分かっています。バイヤーが複数のサプライヤーを比較検討している場合、1人の営業担当者と過ごす時間はわずか5%または6%に過ぎないのです。

https://www.gartner.com/en/sales/insights/b2b-buying-journey

また、BtoBの購買行動は直線的なリニアプロセスではなくループ動線で行われます。つまり各購買ステージを何度も行ったり来たりするため、一層BtoBの効果測定を難しくしているのです。

評価されにくいBtoBマーケティング

2022年のMarketing Measurement & Attribution調査に回答したBtoBマーケターによると、マーケティングのパフォーマンスとインパクトを示すにあたり抱えている課題は以下の通りです。

  • バイヤーステージ全体のアクティビティを測定および追跡できないこと
  • チャネルやキャンペーン全体のインパクトを測定できないこと

では解決策としてどのようなことが考えられるのでしょうか。具体的な回答を見ていきましょう。

  • マーケティングがパイプラインと収益に与える影響を示す必要がある(回答者の62%)
  • マーケティング活動を測定する能力が不十分または改善が必要である(回答者の58%)
  • すべてのマーケティング投資についてROIを証明する必要がある(回答者の54%)

自社のマーケティングのパフォーマンスとインパクトを測定・分析する能力が優れていると答えたのは、回答者のうちわずか10%でした。

リフトベースのパフォーマンス指標

BtoBマーケターは長年にわたり新規顧客の獲得に焦点を当て、投資の比重を置いてきました。しかしフォレスターの調査によると、BtoBバイヤーが必要としているのは、購入プロセスにおけるサポートであるということがわかっています。これを踏まえると、新規顧客の獲得数やその単価だけでは BtoBマーケティングの効果を示すことにはならないと言えるでしょう。

BtoBマーケティングで採用すべき評価指標の一つとしてリフトベースのパフォーマンス指標をご紹介します。この指標は、マーケティングが購買グループのメンバーと一定の回数エンゲージメントを確立することで、ビジネスの収益が向上することを示すものです。

リフトベースのパフォーマンス指標を決めるためには、何回のインタラクションがビジネスに最適な収益増をもたらすかを明らかにする必要があります。マーケティング担当者は、この分析に基づいてエンゲージメントの目標を設定し、バイヤーとのエンゲージメントレベルをKPIにしマーケティング活動を進めるのです。エンゲージメントの目標を8インタラクションとした時の例を見てみましょう。

https://www.cmswire.com/digital-marketing/b2b-marketers-must-embrace-new-vision-of-lift-based-metrics/

表から読み取ることができるこの企業のパフォーマンスは以下の通りです。

  • 全体平均では商談の20%が受注しており平均受注額は5万ドルである
  • バイヤーとインタラクションがなかった場合の勝率は13%で平均受注額は4.68万ドル。一方8〜15回インタラクションがあった場合、勝率は25%に上昇し平均受注額は6万ドルに増加している

この結果に基づくと、8回のインタラクションを達成したパイプラインの割合を確認し、受注額の上昇との関係性が認められた場合、ビジネスの収益リフトであると考えることができます。マーケティングオートメーションツールなどでマルチタッチアトリビューション分析を使えば各マーケティング施策がボトムラインへ与えた影響を分析できますが、このようにタッチポイントの数で分析をすることもできるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。リフトベースのマーケティング指標はマーケティングが与える影響を把握する一つの手法であり、シングル・マルチタッチアトリビューションモデルなどとくみあせて使用することでその分析により意味を持たせることができるでしょう。また接触回数が増え購入プロセスが長くなっているという今日のBtoBバイヤーの行動傾向を鑑みても、今こそ活用すべき指標であると言えます。

Iku Hirosaki
Iku Hirosaki
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廣崎 依久
取締役 兼 COO | Board Member and Chief Operating Officer

大学在学中に株式会社マルケト(現アドビ株式会社)にてマーケティングインターン終了後、渡米。大学院にてマーケティングを学んだ後シリコンバレーに移りEd Techのスタートアップ企業、Couseraにてフィールドマーケティング及びエンタープライズマーケティングオペレーションに従事。その後シンガポールに渡りDSPベンダーのMediaMathにてAPAC地域のフィールドマーケティング及びマーケティングオペレーションを担当。01GROWTHでは教育サービスの開発に加え、国内外のコンサルティング業務を行う。著書に『マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識』(MarkeZine BOOKS)がある。